2024年度 卒業研究発表会
2年生の4,5期は学びの集大成。実験技術を応用する力を養うために卒業研究を実施しています。
2025年2月28日にバイオテクノロジー科の2024年度卒業研究発表会を実施しました。今年度は、バイオ科の学生や教員だけでなく、発表者(2年)のご家族、高校の先生方、卒業生、地域の方々、他学科の先生にもお声がけし、大勢が見守る中での開催になりました。
このブログでは、各班の取り組みをご紹介します。
1班『酵母の発酵力の比較および酵母パンの作成』
ドライイースト(パン酵母)だけでなく、ワイン酵母、ビール酵母を使ってパンをつくり、酵母の発酵力とそれぞれのパンの品質評価をしました。
学生から一言:
ビール酵母で作ったパンは甘みが強かったです。糖が分解しきれず残っているのだと思いました。酵母の種類でパンの香りや膨潤度(ボリューム)が違うのが興味深かったです。
担当教員から一言:
パンは工数が多い料理です。官能評価を行うとなると、その日中に全てを作製しなければならず、大変な作業量でしたが、その分成長が感じられました。(菅井)
2班 『動物・植物性ミルクに含まれる糖の分析』
食品分析実習に興味をもった3人組。動物性、植物性の乳製品に含まれる糖の分析をHPLCや薄層クロマトグラフィーでおこないました。
学生から一言:
分析の結果、動物性乳製品はほとんどが乳糖でしたが、豆乳、ココナッツミルク、アーモンドミルクといった植物性乳製品には多糖から単糖までさまざまな糖が含まれているのが驚きでした。
先生から一言:
糖の分析はなかなか大変。思うような結果が出ず苦労しましたが、3人ともめげずに頑張っていましたね。(大江)
3班 『身近な商品からのHPLCを用いたカプサイシンの分析』
辛い物を食べて病院に運ばれる事件がありました。命の危険に関わる辛み成分『カプサイシン』をHPLCを使って定量する実験をおこないました。
学生から一言:
『18禁カレー味』のスパイスには一味唐辛子の6倍のカプサイシンが含まれていることがわかりました。一人で卒業研究をしたので、モチベーションの維持が大変でした。
担当教員から一言:
私は辛い物が好きなので、官能評価が楽しみでしたがご本人は…。いやぁご苦労様でした。 (大江)
4班 『SDS-PAGE観光案内 前編(濃縮ゲル編)』
緩衝液はなぜ酸やアルカリを加えてもpHが変動しないのか。SDS-PAGEの濃縮ゲルと分離ゲルのpHの違いが泳動にどのように関わっているのか。バイオの実験で疑問に思ったpHについてとことん追求しました。
学生から一言:
1.5M Tris水溶液 理論値 pH11.14 実測値 pH11.21
担当教員から一言:
電気泳動(SDS-PAGE)は決まったpHで実験します。本当にそのpHで良いのだろうか?素朴な疑問からのスタートでした。 (大藤)
5班 『ユーグレナの培養条件の検討』
ユーグレナ(ミドリムシ)は食品やエネルギー資源として注目されている生物です。今回はユーグレナを単離し、大量培養に適した成分を検討する実験をおこないました。
学生から一言:
ユーグレナの単離に苦労しました。どうしても酵母がコンタミネーションしてしまうのです。ところが、酵母がコンタミした培地で、ユーグレナがすごく増殖することがわかりました。酵母エキスを加えた培地で培養すると予想通り、ユーグレナが一般的な培地の2倍以上の増殖を示しました。
担当教員から一言:
おもしろい結果がでると『何でだろう?』とやる気スイッチが入り、興味の赴くまま、楽しく実験しているのが印象的でした。(宮ノ下)
6班 『自己治癒コンクリートに関わる微生物の検討』
炭酸カルシウムを生産してひびの入ったコンクリートを修復する微生物がいます。納豆菌と同じ仲間のバチルス菌です。今回私たちは、納豆から単離したバチルス菌も同様の作用があるのかを確かめるため炭酸カルシウム生産量を確認しました。
学生から一言:
納豆は桿菌のバチルスの他にも球菌が多く、バチルス菌だけを単離するのが大変でした。実験では、納豆菌が炭酸カルシウムを生産することがわかり、コンクリートの自己治癒の可能性が開けました。
担当教員から一言:
何度やっても納豆からは球菌しか培養されず、随分苦労していました。時間があれば、納豆から得られた菌でコンクリートを修復できるか確認したかったですね。(松井)
7班 『廃棄物からのバイオエタノールの開発』
桃缶のシロップや出がらしの茶葉など廃棄物からエタノールの生産にチャレンジしました。
学生から一言
茶葉のセルロースをトリコデルマ菌がもつセルラーゼで分解し、糖にして酵母で発酵させました。シロップからは高濃度のバイオエタノールの生産を試みました。
先生からの一言
短時間の研究期間にも関わらず、2つのテーマを行いました。とにかく、やることが多くて遅くまで残って頑張っていました。(松井)
8班 『マイクロチューバーからのバイオエタノール生産の試み』
ジャガイモの茎頂を培養し、マイクロチューバーを大量生産することを目指しました。培養している間に、ジャガイモのでんぷんからのバイオエタノールの生産にチャレンジしました。
学生から一言:
10㎏のジャガイモをすりつぶし、でんぷんを抽出するのが大変でした。でんぷんの糖化には胃薬を使い工夫しました。
先生からの一言:
植物の組織培養、糖化、発酵、薄層クロマトグラフィーでの糖の分析と毎日やることがたくさんありましたが、体育会系のノリで実験に奮闘してくれました!(宮ノ下)
9班 『乳酸菌系統のPCR-RFLP分析』
ヨーグルトには様々な乳酸菌が含まれています。今回は3種類のヨーグルトと乳飲料を用いて、乳酸菌の同定をPCRーRFLPによりおこないました。
学生より一言:
市販のヨーグルトを牛乳に接種し、同じ乳酸菌が増殖するかを実験しましたが、ヤクルトを牛乳に接種してもヤクルト味のヨーグルトができたのは驚きでした。乳酸菌が、ヨーグルトの味や香りといった個性にも大きくかかわっていることがわかりました。遺伝子工学実験が、前より好きになりました。
先生より一言:
遺伝子工学分野は難しいですが、何とかくらいつき、卒業研究後半は「祝日返上で実験したい!」と実験にのめり込んでいたのが印象的です。よく頑張りました。(宮ノ下)
10班 『物体検出アルゴリズムYOLOを用いたコロニー計測アプリケーションの開発』
品質管理などの現場で役立つ、微生物のコロニーを自動計測できるアプリケーションをIoT+AI科とコラボレーションし、開発しました。
学生からの一言:
微生物のサンプルとして、黄色ブドウ球菌、大腸菌、酵母のコロニーを1シャーレあたり60個程度で形成させるのが難しかったです。バイオ科では統計の授業はありますが、より複雑な機械学習を1から学ぶことはとても大変でした。最終的に、ある程度の信頼性があるアプリケーションを完成できたのは、IoT+AI科の藤原先生のおかげです。本当にありがとうございました。
教員から一言:
問題解決能力の高い2人が開発したアプリケーションは、今後のバイオ科の実習で活用させていただきます。(宮ノ下)
学生時代に夢中になって実験にのめり込み、やり抜いた経験はこれからの人生で必ず役立ちます。バイオの知識と高い技術力そして『自信』を身につけたみなさんなら、鬼に金棒!卒業後にバイオ業界で活躍されることを期待しています。
★卒業研究ブログ バックナンバー★
・2024年度 物体検出アルゴリズムYOLOを用いたコロニー計測モデルの開発
・2024年度 バレイショでんぷん(片栗粉)+胃腸薬=お汁粉味!?
・2022年度 卒業研究発表会 ~こんな先輩になりたい!2年生が1年生に貫禄を見せる~
・1本3300円のバラ!(2020)
・早口で3回言えたらすごい! ジアリルジスルフィド&ベータクリプトキサンチン(2020)
・毛だらけの葉(2020)
・自作しちゃいました!電気泳動装置(2020)
・焼き芋の香りがするワインができた!(2021)
・捨てるのはもったいない!胡蝶蘭 再生への道(2021)
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