捨てるのはもったいない!胡蝶蘭 再生への道(2年 バイオテクノロジー科 卒業研究 植物班)〔074〕
開店祝い、開業祝いなどの贈り物として喜ばれる「胡蝶蘭(コチョウラン)」。切り花や他の鉢植えと比べて開花期間が長く、豪華絢爛な花を1~3か月間楽しめます。
3年前、小山学園の50周年記念式典※が開催され、お祝いにたくさんのコチョウランを頂きました。しばらくの間、東中野の東京テクニカルカレッジのエントランスに飾られました。あれから3年、いくつかの株は再び花を咲かせましたが、いよいよ花も咲かなくなり、葉や根が枯れかけてきました。せっかく頂いたコチョウランをなんとか復活させたい!バイオテクノロジー科は、卒業研究でこのテーマに取り組みました。
まず、枯れかけたコチョウランを株ごと取り出し、不要な根を切り落として1週間乾燥させました。その後、水でもどした水苔を根に巻いて、新しいポットに植え替えました。
学生は、コチョウランの栽培には部位ごとに適した湿度があることをつきとめました。根は常時湿潤にしないのが基本。一方、葉は霧吹きで水を吹きかけて常に湿度を高くするのがポイントです。「ある程度、温度と湿度を保てる場所をつくりたい!」と、学生自ら100円ショップで購入した不織布や金属パイプを組み立てて簡易的な温室をつくりました。
教室は昼夜で温度変化が激しく、湿度は25%と乾燥しています。簡易温室は、温度20℃、湿度60%に保つことができました。栽培場所は、直射日光が当たらず、明るい所がベストです。窓から自然光が入る所に簡易温室を設置し、コチョウランを栽培することにしました。1ヵ月後、瀕死だったコチョウランの葉が青みを増し、生命力を取り戻しました!次の目標は、花を咲かせることですね。
また、組織培養でコチョウランの再生も試みています。まず、コチョウランの葉の表面を70%エタノールと次亜塩素酸ナトリウム(Cl 0.5%)で殺菌し、滅菌水ですすぎました。その後、メスで1㎝程度の葉片にし、植物ホルモンが入った培地に置床し培養しました。冬休みをはさんで3週間、そろそろカルス※が形成している頃です。さっそく培養物を観察すると…..すべての葉片の切り口と培地が真っ黒に!いったい何が起こったのでしょう。
「ラン科植物は、組織培養時にフェノール物質を生成し、それが原因で褐変を伴って枯死することが多いようです。ラン科の組織培養を成功させるには、褐変を抑えることが重要。現在、抗酸化剤(アスコルビン酸)、ポリビニルピロリドン、暗黒処理で褐変を抑えられるかどうか検討中です。今のところ、暗黒とアスコルビン酸添加が有効です。」と学生。
残念ながら、今年度中にコチョウランを組織培養で再生するのは難しいですが、この培養技術が次の学年に引き継がれ、近い将来、学生が育てたコチョウランの花を観察できることを楽しみにしています。
※小山学園 50周年記念式典の様子はこちら
◆本日のバイテク用語№31◆
カルス:植物組織を一定濃度のオーキシンやサイトカイニンを組み合わせた培地(カルス誘導培地)で培養すると、組織が脱分化しモコモコした未分化細胞塊(カルス)が形成されます。カルス細胞は未分化能を維持したまま継代培養できます。また、オーキシンやサイトカイニンの濃度のバランスを変えると、生じたカルスから根や葉茎を再分化させることができます。
卒業研究のバックナンバー
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2020年度 自作しちゃいました!電気泳動装置
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