加工食品から大豆由来のDNA検出 ~納豆からは検知でき醤油からは難しい~(卒業研究 大豆班 076)
豆腐、納豆、豆乳、おから、味噌に醤油。私たち日本人の食文化には大豆加工食品がかかせません。大豆の加工には粉砕、乾燥、加熱、発酵、精製とさまざまありますが、その加工のプロセスによって大豆DNAはどのくらい壊れるのでしょうか。卒業研究の中で食品から抽出したDNAをPCR法で増幅し、増幅断片の長さから大豆DNAの分解レベルを調べた班があるのでご紹介します。
学生が実験で使った食品は、生の大豆もやしと、豆乳、納豆、味噌、SOYJOY、醤油の5種類の大豆加工食品です。このサンプルからDNAを抽出・精製し、電気泳動すると、生のもやし以外のサンプルで壊れたDNAが検出されました。おそらく、加工の過程でDNAが壊れたのでしょう。
実際、どのくらいの大きさのDNAが食品に残っているのか。これを調べるために、大豆レクチン遺伝子の100bp程度の短い断片を増やすプライマーと800bp程度を増やすプライマーを使って、抽出したDNAをPCRで増幅しました。
その結果、豆乳には、比較的大きなDNA断片が残っていることがわかりました。SOYJOYや味噌、納豆は、加工によりDNAの分解が進み800bpくらいの大きさのDNAは残っていませんが、100bpくらいのDNAは残っていることがわかりました。一方、醤油は100bp程度の断片も増幅しなかったことから、小さなDNAすらほとんど残っていないことがわかりました。やはり、醤油はDNAの検出が難しいんですね。
「加工食品だけでなく、もやしをオーブンで加熱したり、茹でたりしてからDNAを抽出し、PCRで断片を調べました。その結果、DNAの分解は加熱温度と時間に依存することがわかりました。加工におけるDNA分解の指標がわかったことで、遺伝子組換え(GM)食品のDNA検査に応用できると期待しています。」と学生。
大豆をたくさん消費する日本ですが、自給率はわずか25%で大半は輸入に頼っています。主な輸入先はアメリカです。そして、アメリカで栽培される大豆の90%はGM大豆なんです。輸入した大豆にGM大豆が含まれていて、国内で生産される大豆加工食品に混入する可能性があります。学生の『加工によるDNAの分解の違い』を調べた卒業研究は、GM食品からの遺伝子検出法の知見として役立つのではないかと期待しています!
卒業研究で参考にした論文: 大豆加工食品からの組換え遺伝子検知法の検討『東京健安研セ年報 Ann. Rep. Tokyo Metr. Inst. P.H., 54, 136-141, 2003』
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文責: 宮ノ下いずる