卒業生インタビュー きっかけはTTCバイオ Part2『専門学校で培った経験を武器にクラフトビール業界に旋風を巻き起こす!』(東京テクニカルカレッジ バイオテクノロジー科)〔066〕
クラフトビール業界で植竹大海を知らない人はいない。2008年東京テクニカルカレッジ(TTC)バイオテクノロジー研究科を卒業後、株式会社 協同商事コエドブルワリーでビール造りを始めた植竹さん。自らが醸造作業責任者として取り組んだ「伽羅 -kyara- 」はワールドビアカップ2014 American Style Amber Lager部門で銀賞を受賞。その後、複数の醸造所で醸造長として手腕を発揮し、独立。自分のブルワリー(ビール醸造所)を立ち上げている。

植竹さん(中央)バイオテクノロジー科大江科長(右) 松井先生(左)2014年撮影
先日、忙しい合間を縫って来校してくれた彼に、軽い気持ちでビールの製法について聞いてみた。ビールの味や深みはやはり酵母の種類で決まるのか?素人の質問に、彼は優しく微笑み『どこから話しましょうか…』と頭をかく。大麦の種類だけで20種類以上。その後、どのように酵素を働かせ麦汁を作るか、その加工の工程だけで100以上のやり方がある。そこに酵母やホップ、水の種類、ハーブや果実、米など副材料を組み合わせると、作れるビールは無限大になる。目を輝かせビール造りの魅力を語る彼の話にグイグイ引き込まれた。このまなざしは、バンド演奏や卒研の実験に夢中になっていた頃と変わらない。

植竹 大海さん(株式会社Knot 代表取締役 ビール醸造家)写真は2021年撮影
2008年度 バイオテクノロジー研究科 卒業
―――東京テクニカルカレッジのバイオテクノロジー科を志望した理由は?
入学前のフリーター時代、父の仕事の手伝いで、マイクロインジェクション※を行う際に使用する顕微鏡を某大学の研究室に納入することがありました。その研究室の先生に「これからは必ずバイオの時代が来るよ」と言われ、興味を持ったことが最初のきっかけです。
もともと生き物が好きだったこともあり、自宅から近く(当時は国立キャンパス)、バイオテクノロジーを学べるTTCの見学会に参加し、実験が楽しかったことが入学の決め手になりました。
※ マイクロインジェクション:微小ガラス管を用いてDNAなどの物質を細胞内に注入する方法)
―――学生時代の心に残っている思い出を教えてください。
1) 授業について
実は高校を卒業していないこともあり、基礎的な学力が非常に低い状態での入学でした。初年度は授業とは別に補習授業があり、数学、英語、化学など基礎の基礎から学ぶことができ大変助かりました。(植竹さんは、高等学校卒業程度認定試験(旧大検)を合格してTTCバイオ科へ入学)
また実験のコマ数がとても多く、内容も化学分析から培養を中心とした生物分野まで幅広いので、大学で化学を学んでいた友人に驚かれました。数ある実習の中でも、微生物の成長が明確にわかる微生物学の実習が好きでした。
2) 卒業研究について
バイオ科2年の時に、卒業研究としてキノコの栽培を行いました。活用法が限られる「おから」を利用したエリンギ栽培を行い、発生条件や収穫量の比較を行い、卒業論文を書きました。過去にキノコをテーマに取り組んだ学生がいなかったようで、一からキノコ栽培のことや実験方法を自ら調べ、実験を行い、結果が出せたことが何よりも嬉しかったです。
3) イベントについて
毎年の学園祭が楽しみでした。ステージでバンド演奏をしたことも・・・。
女装コンテストにも出場しましたが、手前味噌ながら歴代1番の仕上がりだったと思います。ちなみに、衣装は松井先生にお借りいたしました。

4) 先生について
私は決して真面目な生徒ではなかったので、先生方にはご迷惑をおかけしました。私が、バンド活動やアルバイトに夢中になり、休みがちになったときも、先生方は決して見捨てないんです。改めて思い返すと、本当に面倒見の良い、生徒想いの先生ばかりでした。社会人になってから、その有難みをより強く感じています。
5) 就職活動について
実は就職活動らしい活動はしなかったのです(笑)。地元埼玉のクラフトブルワリー「COEDO」が主催する感謝祭のライブイベントに知り合いのバンドが出演していたので遊びに行きました。その時に飲んだ「COEDO」のビールに衝撃を受けました。その香り、味わい、深みが想像をはるかに超え、ビールでここまで自由に味を変えられるのかと驚きました。一口ビールを飲んで、「あ、ここで働きたい」と思い、その場で社長に直談判し、採用となりました。受けたのはコエドブルワリー1社だけです。
―――バイオ科での学びが現在の仕事に活きていると感じることはありますか?
学んだすべてが活かされています。ビール醸造においては、生化学、微生物学、化学、英語、機器分析、情報分析などなど、本当に多くの知識が必要になるのですが、どれも学生時代に学んだことです。最新のビール醸造では遺伝子工学、分子生物学などの知識が必要とされることもあります。
もちろん、仕事を始めてからもさらに勉強を続け、積み重ねてきた知識があっての今ですが、学生時代に学んだことがその礎になったのは間違いありません。
実際に仕事を始めてからは、科学的なバックグラウンドを活かしながら「分析に基づく理論と再現性のあるビール作り」を推進し、その結果が今につながっていると感じています。
―――先輩から在学生へエールをお願いします。
学校の勉強に限らず、どんなことでも「自分には関係ない」「なんの役にも立たない」と思わず、興味を持ったことをトコトン追究してください。
現在は肩書上、醸造家という仕事になっていますが、実際には機械の整備や電気工事、排水処理、経理、CADによる図面作成などなど、非常に多彩な仕事をしています。TTCで言えば、環境科、建築科で学ぶようなことも、仕事の一部として行っています。今の自分には関係ないと思っても、それが将来役に立つことが必ずあると思います。ですからどんなことでも面白そうだと思ったら、調べてみたり実行してみたりするのが重要だと感じています。ピンと来ることが見つかったら、自分の感覚を疑わず突き進む方が良い結果が得られるかもしれません。
学生から社会人になることに、不安をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、ご心配なく。社会は学生時代には分からなかった、知らなかった楽しいことがたくさんありますよ。もちろん仕事が楽しければそれがベストですよね。
そして学生時代にしか味わえない楽しみももちろんあります。学友達は一生の財産ですので、同級生と学生時代をとことん楽しんでください。
―――これからの夢を教えてください。
自身の会社を起こしたので、まずは事業の継続と従業員の生活を守っていくことが当面の最重要な仕事ですが、それを単に達成するのではなく、自分も一緒に働くメンバーも楽しく達成できることが重要です。
私の会社のメンバーは皆アウトドア、釣り、そしてお酒好きばかりです。それらのカルチャーとクラフトビールを結びつけ、東北海道にはまだ存在しないクラフトビールカルチャーを根付かせることが夢です。それは人のため、というより自分のためです。「クラフトビールをブームから文化へ」というキーワードがこれからの目標であり、夢でもあります。

12年前、バンド活動と微生物学に夢中になっていた植竹さんは、今や世界的に有名なブルワー(醸造家)になっていた。彼が醸造責任者として、初めて一からレシピを開発した「毬花(マリハナ)」は今でもCOEDOビールの定番である。夕食でキンキンに冷えた「毬花」をグラスに注ぐ。美しい琥珀色のビール。泡立ちもいい。毬花はホップのこと。グレープフルーツのような爽やかでほろ苦い風味が口いっぱいに広がる。やはり、ビールははじめの一杯が格別にうまい。それが教え子のビールならなおさらだ。彼が立ち上げた醸造所でビールが誕生するのももうすぐ。どんな攻めのビールが出来上がるのだろう。今から待ち遠しい。
植竹さんを深掘り!
2014年 TTCブログ 卒業生の活躍を紹介! バイオテクノロジー科
2015年 TTCブログ 卒業生をお招きしたキャリアーガイダンスを開催しました。
2021年 ブームから文化へ!日本の未来のブルワーもはぐくむ醸造所
北海道「Brasserie Knot」(ブラッスリー・ノット) クラウドファンディング進行中
◆卒業生インタビュー バックナンバー◆
Part1 西尾さん(2008年 バイオ科卒)『植物とペンギンが好き!仕事も趣味も楽しむ生き方』
Part2 植竹さん(2008年 バイオ研究科卒)『専門学校で培った経験を武器にクラフトビール業界に旋風を巻き起こす!』
Part3 今野さん(2020年 バイオ科卒)『文系大学を出てから専門学校でバイオ技術を学ぶ!医薬品開発を仕事に』
Part4 吉野さん(2021年 バイオ科卒)『私が証明します いつからでも学び直せる!』
Part5 今村さん(2016年 バイオ科卒)『大学を中退して専門学校へ 挫折経験をバネに電力業界で働く』
Part6 西村さん(2020年 バイオ科卒)『実験を貪欲に取り組んだ学生時代 あの時の経験が今の私を支えています』
Part7 大森さん(2008年 バイオ科卒)『目的意識を持ちながら取り組むことが大事! 仕事も学生時代の実験も』
Part8下田さん(2017年 バイオ科卒)『勉強だけじゃない!バイオ科で学んだ大切なもの』
Part9 T・Sさん(2020年 バイオ科卒)『東大大学院から専門学校へ 古生物研究の情熱を、バイオ検査のスペシャリストとして活かす』
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文責 宮ノ下いずる