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2026.02.28 バイオテクノロジー科

パイナップル不可食部を有効利用したい!5週間で挑んだバイオエタノール製造とエンジン始動の記録

こんにちは、バイオテクノロジー科です。

2025年度の卒業研究で、パイナップルからバイオエタノールの製造をおこなったメンバーがいます。彼女たちの挑戦は、わずか5週間という短期間で「製造プロセスの確立」から「評価」までを完遂することでした。限られた時間の中で、いかにして「廃棄物」を「燃料」へと変えたのか。その試行錯誤と、技術的な検証プロセスにスポットを当てて報告します。

少し長くなりますが、写真だけでもぜひ追いかけてみてください。バイオと自動車、二つの専門性が重なって生み出された熱量が、少しでも伝われば幸いです。

■捨てられる「芯や皮」を資源に

私たちが食べているパイナップルの約50〜55%は、芯や果皮などの「不可食部」として廃棄されています。その量は世界で年間約2,800万トンにものぼるとか。そんな膨大な「ゴミ」に含まれるセルロースに着目し、食糧と競合しない次世代燃料への変換に挑みました。

■研究のスタートは「法的手続き」から

本研究を進めるにあたり、まず取り組んだのが法的なハードルのクリアです。

・酒税法への対応: 製造したエタノールが飲用転用されないよう、クエン酸と塩を添加する「不可飲処置」を徹底。
・製造許可の申請: 産業経済局へ「教育目的のバイオエタノール製造許可申請」を行い、正式な認可を得てプロジェクトを始動させました。

技術開発だけでなく、こうした公的なルールを正しく理解し、手続きを踏むプロセスも、バイオ技術者として欠かせない重要な学びとなりました。

■バイオエタノール製造の第一歩

まずは市販のパイナップルを用い、以下の工程を確立することからスタートしました。

前処理: カット・80℃での熱乾燥・粉砕機による粉末化。
糖化・発酵: セルラーゼ(酵素)でセルロースを糖へ分解し、ワイン酵母でアルコールを生成。
蒸留: 沸点の差を利用したアルコールの濃縮。

【写真は蒸留の様子】

当初の試作では培養に4日間をかけました。しかし、得られたのは乾燥粉末10gから、わずか9.9%のアルコールがたった15mL。
ここから目標の「95%アルコールを100mL以上」製造するには、計算上……

• パイナップルが15個(1個あたり乾燥粉末100g)
• 培養フラスコが140本
• 期間は2ヶ月 もかかるという絶望的な結果に。

卒業研究の期限はあと4週間。このままでは間に合わない! 「実用化」に向けた、徹底した条件検討が始まりました。

■4週間で製造するための最適化:データが導いた「最短ルート」

大量生産を目前に、彼女たちは3つの実験を行い、プロセスの最短化に挑みました。「経験則」ではなく「データ」で不可能を可能に変える、バイオ科の真骨頂です。

1.発酵方法:糖化と発酵を同時に行う「並行複発酵」を採用。効率を落とさず工程を一つ短縮!

2.部位別検証:葉・果皮・芯、どの部位からも発酵を確認。「混合粉末」によるフル活用を決定し、選別の手間をカット!

3. 時間の最短化:1〜4日の培養を比較した結果、アルコール濃度に大きな差がないことを発見。「発酵には数日かかる」という常識を捨て、「1日(オーバーナイト)発酵」を確立しました。

「2ヶ月かかる」はずの計算を、知略によって「4週間」へと引き寄せることができました。

■大量培養と4段階蒸留

最適化した「1日並行複発酵」のプロセスを使い、いよいよ大量生産を開始しました。

・毎日10本、計70本のフラスコを稼働
一度にすべてを行うのではなく、毎日10本ずつ、計70本の三角フラスコを稼働させました。インキュベーターの限られたスペースを最大限に活用し、1ヶ月間、止まることなく発酵を回し続ける粘り強い作業です。

・限界に挑んだ「4段階蒸留」
こうして得られた醸造液を、純度を高めるために繰り返し蒸留します。
1次蒸留: 17.5%(2000mL)
2次蒸留: 40.2%(800mL)
3次蒸留: 77.6%(320mL)
4次蒸留: 86.0%(160mL)達成!
単蒸留では水とアルコールの共沸点(約95.6%)の壁がありますが、時間と設備の限界まで挑み、ついに濃度86%の精鋭燃料160mLを手にしました。

【比重計でアルコール濃度を測定している様子】

■エンジン検討:理論を実機で証明する

精製した160mLのバイオエタノールを携え、姉妹校の東京工科自動車大学校(世田谷校)1級自動車エンジニア科へ。自動車のプロを目指す学生たちの協力のもと、燃焼試験に挑みました。

1.始動試験
ガソリンによる初爆(きっかけ)ののち、86%バイオエタノールへと切り替え。エンジンが力強く回り続けた瞬間、大きな歓声が上がりました。学生たちのこれまでの努力が、確かな「動力」へと変わった瞬間です。

2.安定性試験
単独燃料ではアイドリングが不安定という課題も直面しました。ここで「不純物のせいか?」と疑い、特級エタノールを用いた対照実験を実施。その結果、不安定さの原因は不純物ではなく、残りの14%に含まれる「水分」にあることを突き止めました。

 

3.実用化試験
単独での安定駆動には98%以上の純度が必要ですが、ガソリンと混合する「E33(エタノール33%混合)」であれば、86%の純度でも安定してエンジンを駆動できることを証明。バイオ燃料の実用的な着地点を見出すことができました。

■小さな一歩、価値ある成長
この5週間のプロジェクトは、法的手続きの確認から始まり、科学的根拠に基づくプロセス開発、そして他分野のプロとの協働まで、生きた学びの連続でした。

捨てられる「芯や皮」を資源に → 試行錯誤のバイオ燃料化 → 社会を動かすクリーンな力へ

当初は「2ヶ月はかかる」と思われた膨大な作業も、データに基づいた知略と、毎日コツコツと積み上げたフラスコワークによって、5週間という限られた時間の中で完遂することができました。

目標の95%には届きませんでしたが、「自ら課題を見つけ、データを基に解決する」という経験を得た学生たちの顔は、自信に満ち溢れています。この研究が、社会のエネルギーを考えるひとつのきっかけになれば幸いです。

謝辞
本プロジェクトを行うにあたり、多大なるご協力をいただいた東京工科自動車大学校 世田谷校の皆様に深く感謝申し上げます。
特に、実験を全面的にバックアップしてくださった多根先生、高橋先生。そして、専門的な視点から共に熱い議論を交わし、燃焼試験を支えてくれた1級自動車エンジニア科の大島さん、尾島さん、津久井さん、田口さん。
分野の垣根を越えた交流は、バイオ科の学生たちにとって何よりの刺激となり、大きな成長に繋がりました。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。

学校ブログ  姉妹校の東京工科自動車大学校とコラボレーション授業を実施!

 

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文責:宮ノ下いずる【193】

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