手作りアクアポニックスでバジル栽培! RJP活動報告 №6
東京テクニカルカレッジ(TTC)にはRJPというユニークな授業があります。RJPは、Real Job Project(リアルジョブプロジェクト)の頭文字で、学生が主体となり企画、予算計画、実行、振り返り、改善などのプロセスを経験から学ぶTTC独自のプログラムです。バイオテクノロジー科では、実験で身につけた仮説検証のノウハウを活かして、モノづくりや理科実験、花壇整備などを行いバイオテクノロジーの魅力を発信しています。この活動を通して、チームで考え、問題を解決する力を養うのが狙いです。
今年のバイオ科は1,2年生混合の6班編成で、毎週金曜日の午後(6~12月)にRJPの活動をしています。今回のブログでは、水産養殖と水耕栽培を取り入れたアクアポニックス作りにチャレンジしたRJP班の取り組みをご紹介します。
アクアリウムが好きな男女6名が集まり、アクアポニックス班が結成しました。アクアポニックスとは、養殖と水耕栽培を合わせた循環型農業形態のことをいいます。水槽で魚を飼い、魚のフンが硝化細菌などの微生物の働きで分解され、それが植物の栄養源になるという理想的なサイクルをつくります。
「アクアポニックスは、微生物や植物により水が浄化されるので水槽の水換えの必要がないんです。また、肥料なしで植物もすくすく成長するので、一石二鳥。省エネで野菜栽培ができます。」とリーダーのFさん。
活動1. 水耕栽培に適した植物の選定
アクアポニックスで栽培される代表的な植物は水耕栽培しやすい葉物野菜です。班員で相談した結果、バジル、レタス、パクチーを栽培植物に用いることにしました。まず、ホームセンターで土植えの苗や種子を購入。苗は根を水で洗い、水耕栽培に適応するまでわずかな水量で栽培しました。白い根がでてきたらアクアポニックスに使いました。種子は水を含んだ脱脂綿で発芽させ発根させました。数週間栽培しましたが、最終的に、アクアポニックスではバジルを使用することにしました。
活動2. アクアポニックス装置をつくる
アクアポニックスのシステムは植物の水耕栽培装置(ろ過部分含む)と魚の飼育装置の2つに分かれます。はじめ、どのような装置を作るかアイデアを出し合いました。
目指すはこんなアクアポニックス装置!
さっそく水耕栽培とろ過をおこなう装置を手作りしました。ホームセンターで購入したプラスチック容器にドリルで穴を開け、ホースを通します。水漏れしないように隙間はグルーガンで接着して…
容器ができたら、ろ過装置を作ります。ろ過材として活性炭を使用しました。活性炭は多孔質なため硝化細菌のすみかとなりやすく、硝化能力が高くなります。さらに、水の着色も吸着してくれることが期待できます。活性炭の他にも軽石などを入れて水質浄化能力を向上させました。
ろ過装置の上に育てたバジルを植えこみアクアポニックス装置の完成です。水槽には食べられる魚ではなく観賞用の金魚を入れました。植物はLEDライト下で栽培します。ポンプの電源を入れると、飼育槽の水がポンプで吸い上げられろ過槽へ、その後再び飼育槽へ、自作のアクアポニックスで水の循環を確認できました。
活動3. パックテストで水質を調査する
アクアポニックスができたら、1週間おきに水槽の水質を調査するため、アンモニア、亜硝酸塩、硝酸塩、pHなどを測定しました。比較のために、片方はバジルを栽培しているアクアポニックスの水槽の水、もう片方はバジルを植えていない水槽の水を計測しました。9週間後、植物なしの水槽の金魚の元気がありません。水質検査の結果、硝酸塩の数値が非常に高いことがわかりました。植物がないので、硝酸塩が吸収されず水槽水中に多量の硝酸塩残り魚にダメージを与えてしまったと考えました。
金魚が死んでしまいそうだったので、対照実験はここまで。「植物なし」のところにバジルを移植し、アクアポニックスにしました。数週間で水質が改善されたので、再び金魚を入れて飼育を再開しました。今では、どちらの水槽の金魚も元気に泳ぎ回っています。
活動4. バジルの葉からβカロテン抽出
緑黄色野菜に含まれるβカロテンは、体内に発生した活性酸素を除去する抗酸化作用があり、老化防止やがん、動脈硬化、心疾患など生活習慣病の予防に役立つ栄養素として注目されています。バジルは、βカロテン含有量が野菜の中でもトップクラス。文献では100gあたりのβカロテン量がホウレンソウが4200μgに対してバジルは6300μg含まれているそうです。
せっかくなので、自分たちで育てたバジルからβカロテンを抽出してみることにしました。バジル4gを乳鉢に入れ、アセトンを入れてよく混ぜました。抽出液を遠心管に入れ、遠心分離した上澄み液をA液とします。A液に石油エーテルを加えて混ぜると、2層に分離します。緑の上部層(B液)にはクロロフィルやカロテノイドなど脂溶性の光合成色素が含まれています。B液を試験管にとり、今度はメタノールを加え攪拌すると2層に分離します。緑色の上層がクロロフィルaとカロテン、黄緑色の下層がクロロフィルbとキサントフィルです。カロテンを含む上層(C液)を別の試験管に移し、メタノールと60%KOH、少量の蒸留水を加えて攪拌すると、上層部に黄色の液体(D液)が得られます。これがカロテンです。
活動5. バジルソースを作って食べる
アクアポニックスで育ててきたバジルが増えてきたので、活動最終日は収穫祭!βカロテンは脂溶性のため、油と調理すると吸収率が上がります。そこで、オリーブオイルと合わせたジェノベーゼ(バジルソース)を作ってみんなで食べることにしました。すり鉢に松の実、ニンニクと少しのオリーブオイルを入れてすりつぶします。別のすり鉢には、茎をとったバジルとオリーブオイルと塩を入れてすりつぶします。最後に2つをまぜてジェノベーゼの出来上がり。このバジルソースはチーズ班が作ったモッツァレラチーズの上にのせ軽くオーブンで焼いてからクラッカーと一緒に食べました。
市販バジルで作ったジェノベーゼとアクアポニックスで栽培したバジルから作ったジェノベーゼ、どちらも学生たちに好評でした!
「今後は、アクアポニックスで金魚だけでなく熱帯魚を飼ったり、バジル以外の植物も育てたいですね。」と今後の抱負を語る2年のIさん。来年度のRJP活動で、今年度のアクアポニックスを引き継いでくれる学生大募集です。
アクアポニックスを通して微生物の硝化作用に興味をもったFさんは、卒業研究でも硝化細菌の作用を調べるために、日々実験に励んでいます。RJP活動で興味をもった事柄を、卒業研究でさらに深く学べるのもTTCバイオテクノロジー科の魅力です。探求心旺盛な方の入学をお待ちしています!
今年度のRJP活動を6回にわたりご報告してきましたが、今回が最終回です。来年度も新しいメンバーでRJP活動をおこなっていきますので、どうぞお楽しみに★
◆2023年度 RJP活動報告 バックナンバー◆
12月号№4 自分で育てたユーグレナ(ミドリムシ)入りマシュマロをつくりたい!
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