卒業生インタビュー Part8『勉強だけじゃない!バイオ科で学んだ大切なもの』
1年生の3月に入ると就職活動が本格化してくる。とは言え、働きたい分野をしぼりきれていない学生も多い。TTCバイオテクノロジー科では、この時期に会社説明を実施して業態や職種のイメージを持ってもらっている。会社説明をおこなうのはTTCバイオ科の卒業生である。今年も3月中旬に、食品、医療、化学分析会社でバイオ技術者として、また、代理店で薬品等の営業担当として働く卒業生4名にお越しいただいた。
その一人が名糖産業 株式会社で化成品の製造業務をおこなう下田さんだ。「お久しぶりです。」と彼から声をかけてくれた。明るく気さくな人柄は学生時代から変わっていない。プレゼンテーションでは、1年生に向けて仕事内容や社風、やりがいなどをわかりやすく、ユーモアを交えて語る彼の話に、みんながひきこまれていた。もっと、下田さんの話を聞いてみたい。卒業生インタビューを依頼すると、「卒業してからずいぶん経つので忘れていることもありますが、いいですよ。」と笑顔で快諾してくれた。
下田さん (食品製造を行う技術者)
2017年 TTCバイオテクノロジー科卒業
—— 東京テクニカルカレッジ(TTC)のバイオテクノロジー科を志望した理由を教えてくだ さい。
高校は環境科学科で学びました。化学の授業が多く、化学反応や構造式を覚えることがとても楽しかったです。将来は「これまで学んだことがない分野のサイエンスを勉強したい」と思い、高校卒業後の進路は微生物や発酵、医療を学べるバイオテクノロジー分野にしました。
TTCのバイオ科のオープンキャンパスに参加すると、先生と生徒のやり取りが楽しそうで、アットホームな感じが自分に合っていると思い、入学を決めました。
—— 学生時代の心に残っている思い出を教えてください。
1)授業について
TTCバイオ科では、実験器具や機器の使い方から、モル濃度の計算などバイオ技術の基礎から、食品、微生物、遺伝子といった専門的な知識や技術までを幅広く勉強できるので、とても楽しかったです。
実習でとくに印象に残っているのは、タンパク質の電気泳動ですね。SDSポリアクリルアミドゲル作りからサンプルをゲルに入れて電気泳動する作業は苦戦しました。ゲルが固まらなかったり、泳動が進まなかったり、染色するときにゲルが割れたり…。やり直して、ようやく電気泳動でバンドが検出できたときには心躍るほど感動しました。
2) 卒業研究について
卒業研究の記憶は…思い出せません(泣)。卒業研究ではないですが、1年生の時、魚(アジ)からDHA・EPAを抽出するプレ卒業研究をおこなったことを思い出しました。指導担当は松井先生です。抽出方法を文献などで調べ、試行錯誤しながら取り組みました。なかなかうまくいかず失敗ばかりで、良い結果にはつながりませんでしたが、自分たちで考え取り組んだ経験は大きな学びにつながりました。「情報を収集する」「わからないことをそのままにせず、先輩や上司に質問する」「なぜこの結果になったかよく考察する」など、現在の仕事であたり前にしていることは、プレ卒研で学んだことが活かされているのかもしれません。
当時はつらかったですが、失敗しても学ぶことは多いと思います。現役生も失敗を恐れず頑張ってください。
ああ、もう1つ忠告があります。魚を使った実験をすると、白衣を洗濯しても生臭さがしばらく続くので気をつけてくださいね(笑)。
3) イベントについて
TTCの学園祭は全学科の学生が一丸となれる素晴らしいイベントでした。バイオ科では、スライムやキーホルダー、バスボム作りなどを体験できる実験教室と、屋台をだしました。私は屋台メインで活動し、たこ焼きを作って売っていました。クラスメイトと買い出しに行って、ワイワイ言いながらたこ焼きを作った思い出は忘れられません。結局、よく売れて、売り上げでクラスメイトとご飯を食べに行けました!
長野研修も楽しかったです。夜遅くまで、クラスメイトとはしゃいだので、早朝のラジオ体操はきつかったです。半分ねぼけながら体操をしたのを今でも覚えています。
4) 先生について
バイオ科の先生方には、大変お世話になりました。というか、優等生ではなかったので、ご迷惑をかけてばかりだったと思います。言葉遣いや遅刻で注意されることもありましたが、厳しくご指導いただいたことは社会に出てからすごく感謝しています。(当たり前ですが、会社では無遅刻で頑張っております(^_^;))
先生に褒められた記憶もあります。長野研修でのプレゼンテーションで「よくまとまっていたね」と評価されたときは、本当に嬉しかったです。いいことをしたらしっかり褒める、悪いことをしたら叱る、バイオ科の先生には知識や技術だけでなく、社会生活において大切なことを教えていただいたと思います。
私自身、会社で後輩に指導する立場になりましたが、バイオ科の先生のようになかなか上手くはいきません。私も先生方の教えを思い出し、頼れる先輩を目指します。
5) 友人について
バイオ科では私の学年のクラスメイトは全員仲が良かったですね。授業についても助け合って、情報を共有しながら実験をしていました。学校を卒業した今でも同窓会で集まることが多いです。社会人として働く大変さや、やりがいなどをよく話してます。会社の先輩、後輩に同級生に会っているか聞きましたが、ほとんど会っていないと言っていたので、自分の代のクラスメイトは本当に仲がいいのだと思います。友人に恵まれたことに感謝です。
—— バイオ科での学びが現在の仕事に活きていると感じることはありますか?
会社では化成品を製造する業務をおこなっています。TTCの医薬品化学の授業では、この業界に必要な知識を学べました。食品の安全に関する教科は、まさにドンピシャで役に立っています。製造の中で発酵工程があり、バイオ科の微生物学実習で発酵や菌の培養について学んでいたのでスムーズに理解できました。使用機器についても、マイクロピペットやフラスコ、オートクレーブなどは学校で普段から使用していたので、苦労せず仕事でも使えています。たまたま授業ノートを開いた時に、今まさに仕事に直結するような内容があって、驚きました。もう少し勉強しておくべきだったなと少し後悔しています(笑)。
—— 先輩から在学生へエールをお願いします。
これから、就職活動で悩むことが多くあると思います。しかし、何事にもどんどんチャレンジして「失敗は成功のもと」と考えることが大切です。あとは、授業をよく聞き、真面目に勉強することですね。
私自身は、どちらかというと不真面目だったので人のことを言える立場ではないのですが…。この教科が実はこの仕事内容に繋がっていたんだと感じることが多くあります。勉強もおろそかにしない方がいいですよ。それから、学生生活は意外とあっという間ですので、毎日を大切に楽しく過ごしてください。
入社8年目。部下も入り、製造だけでなくマネジメント業務が増えてきたようだ。「人相手は難しいですね。頭ごなしに、こうしてとは言わず、まずは相手の意見をしっかり聞くようにしています。」と下田さん。部下と一緒に食事をしたり世間話をしたりする時間を積極的につくり、信頼関係を築いている。『傾聴』が大切だと話す彼に、豊かな人間性を感じた。母校であるTTCや現在働く会社に対し、感謝を忘れない下田さん。周りの人を大切にする彼は、周りから愛されるだろう。会社説明後の懇親会では、多くの学生が下田さんを囲んでいた。(宮ノ下)
◆卒業生インタビュー バックナンバー◆
Part1 西尾さん(2008年 バイオ科卒)『植物とペンギンが好き!仕事も趣味も楽しむ生き方』
Part2 植竹さん(2008年 バイオ研究科卒)『専門学校で培った経験を武器にクラフトビール業界に旋風を巻き起こす!』
Part3 今野さん(2020年 バイオ科卒)『文系大学を出てから専門学校でバイオ技術を学ぶ!医薬品開発を仕事に』
Part4 吉野さん(2021年 バイオ科卒)『私が証明します いつからでも学び直せる!』
Part5 今村さん(2016年 バイオ科卒)『大学を中退して専門学校へ 挫折経験をバネに電力業界で働く』
Part6 西村さん(2021年 バイオ科卒)『実験を貪欲に取り組んだ学生時代 あの時の経験が今の私を支えています』
Part7 大森さん(2008年 バイオ科卒)『目的意識を持ちながら取り組むことが大事! 仕事も学生時代の実験も』
Part8下田さん(2017年 バイオ科卒)『勉強だけじゃない!バイオ科で学んだ大切なもの』
バイオ科ブログのバックナンバーはこちら
バイオ科 公式Twitter 毎日更新中♪
バイオテクノロジー科 公式 (@TTCbio)
バイオ科の学生Twitterは6月から毎週金曜日更新☆
RJP学生 広報部Twitter(@BioRJP)
文責:宮ノ下いずる【149】