いびつな細胞がまん丸に! 植物組織からプロトプラストの単離〔092〕
突然ですが、ここでクイズです。これは何でしょう?
マスカット? 泡? 顕微鏡画像のようだから、ミクロなもの。クロレラかな?
惜しい!これは400倍で観たチンゲン菜の細胞です。細胞と言っても、植物細胞がもつ細胞壁を取り除いた球状の細胞で、プロトプラスト(protoplast) といいます。今回は、チンゲン菜の葉の組織を酵素処理して、プロトプラストを単離する2年生の植物細胞工学実験をご紹介します。
葉は光合成をする器官です。葉緑体をもった細胞が並んで葉の組織を形成しています。葉片を、植物組織崩壊酵素(ペクチナーゼ)で処理すると細胞がバラバラになり、続いて細胞壁分解酵素(セルラーゼ)が働くと、細胞壁が壊れ細胞膜に包まれたプロトプラストを単離することができます。
チンゲン菜の葉肉組織からプロトプラストをとるため、なるべく葉脈部分を除くよう学生に指示。すると、チンゲン菜は葉脈だけが残った不思議な姿になりました(笑)。
5mm程度の葉片(2g)を酵素液20mlに入れます。酵素液には、ペクチナーゼ、セルラーゼ、そして細胞の破裂をふせぐために糖(マンニトールを使用)が含まれています。今回は、組成の異なる5種類の酵素液を使ってプロトプラストの単離を行いました。
葉片と酵素液を三角フラスコに入れて、30℃でゆっくり振とうし酵素反応をおこないます。
2時間30分後、酵素液が緑色になりました。葉の組織からプロトプラストが単離されたようです。酵素液をガーゼでろ過してチューブに回収。遠心分離をかけプロトプラストを沈殿化し、洗浄した後、顕微鏡で覗いてみました。
糖を含まない酵素液では、プロトプラストは見あたりません。細胞膜が破裂した葉緑体の塊だけが観察されました。
セルラーゼを含まない酵素液では、細胞壁が分解されずに残り、いびつな形の細胞がたくさん観察されました。
やはり、プロトプラストはセルラーゼ、ペクチナーゼ、糖が至適濃度で入っていないとうまく単離できません。
下図は、クイズに出した写真を拡大したものです。よく見ると、プロトプラストにまぎれて固定電話のコードのような、らせん状の管が観察されます。これは葉脈の道管です。
単離したプロトプラストの使い道は?プロトプラスト同士を融合して新植物を作ったり、プロトプラスト内に遺伝子を導入して新しい性質をもつ遺伝子組換え植物を作出するなど、プロトプラストは細胞工学を用いた品種改良に用いられています。
◆植物細胞工学実験のバックナンバー◆
2021年 『美しき顕微鏡の世界 ~ツバキの葉の断面編~』
2021年 『毛だらけの葉』
2021年 『1本3300円のバラ』
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文責 宮ノ下いずる