ユスリカの幼虫の唾液腺染色体の観察 (バイオテクノロジー科 1年 動物基礎実習)〔087〕
バイオテクノロジー科の1年生は、これまで器具の使い方や試薬の調製方法を学んできましたが、2期から化学分析の他に生物を使った動物基礎実習が始まりました。まずは、光学顕微鏡の使い方をマスターします。今回は、ユスリカの幼虫(アカムシ)の唾液腺を観察する実習の様子をご紹介します。
アカムシの唾液腺は、通常の染色体と比べ太く凝集し巨大な染色体として観察されます。さっそく、釣り具屋で購入したアカムシから唾液腺をとって観察しましょう。
まず、アカムシをスライドガラスにのせます。先端が黒い方が頭部です。ピンセットと柄付き針を使って頭部先端をひっぱります。器用な学生は、頭部からつながる唾液腺をすっーと引き抜いていました。唾液腺はぽってり膨らんだ透明なハート形の組織です。顕微鏡で覗くと一対の袋状の構造をしていました。
唾液腺に酢酸カーミン液をかけ、5~10分間染色します。カバーガラスをのせた後、ろ紙を置き、上から指で押しつけてプレパラートを作製しました。400倍の倍率で観察した唾液腺染色体がこちらです。
複数の唾液腺細胞に横縞模様の染色体が観察されました。複製を繰り返した染色体が分離せず束になっているのでこんなに巨大な染色体として観察されます。よく見ると1つの細胞に染色体が3本?あります。アカムシの染色体は2n=6ですが、唾液腺細胞では相同染色体が対合するので、体細胞ですが染色体は6本ではなくその半数の3本で観察されます。
「ユスリカと言えば、皆さんはネムリユスリカを知っていますか?」と松延先生。
「ネムリユスリカは、アフリカの半乾燥地帯に生息しているのですが、カラカラに乾燥しても死なずに生き続ける生物なんです。放射線が降り注ぎ温度変化の激しい宇宙空間にしばらくおいても死なず、水で戻すと生き返り成虫になった驚異の生命体なんですよ。
乾燥耐性をもっているのは幼虫の時だけで、成虫、蛹、卵はないんですけどね。こうした無代謝状態での活動休止現象をクリプトビオシスというのですが、これは幼虫体内で大量に合成されるトレハロースのガラス化によるものだと考えられています。また、植物の種に特異的と思われていたLEAタンパク質がネムリユスリカに存在することがわかりました。」
ネムリユスリカの乾燥耐性のメカニズムがもっと解明されれば、将来的には細胞などを常温で長期保存する技術開発に応用できそうですね。顕微鏡観察の技術を学びながら、最先端の科学の知識を学べるのがTTCバイオ科の魅力です。来週からマウスを使った実習が始まります。頑張りましょう!
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文責:宮ノ下いずる