薬剤感受性試験からの『抗菌効果が期待できるおにぎりの具材は?』(東京テクニカルカレッジ バイオテクノロジー科 応用微生物実習1年)〔062〕
私たちの身の回りには目に見えない微生物がたくさん生息しています。その中には、風邪や食中毒を引き起こす病原微生物(ウイルス、細菌、カビ、原虫など)も潜んでいます。
病原菌による感染症の治療には、ペニシリンなどの抗菌薬(抗生物質)を使いますが、抗生物質の種類によって有効な微生物が異なるため、最適なものを投与しなければなりません。
どんな抗生物質がどんな微生物に効くのか知りたいと思いませんか?バイオ科では、これを実験で学べます!
1年生は応用微生物実験が始まりました。先日は、様々な抗生物質を用い「ディスク拡散法」で微生物の薬剤感受性を調べました。さっそく実験内容の一部を紹介します。
まず、培地を作製し、酵母や黄色ブドウ球菌、大腸菌などを塗抹します。この上に、抗生物質を染みこませたろ紙(ディスク)を置くと、ディスクの薬剤がじわじわと培地に拡散していきます。
この状態で、培養すること1~3日間。もし、薬剤が病原菌によって有効であれば、ディスクの周囲に菌が発育できない円状のエリアが形成されます。これを、阻止円といいます。この阻止円の大きさで微生物の薬剤感受性を判断します。
阻止円が大きいほど、その菌は薬剤に感受性ということになります。例えば、上の写真を見てください。黄色ブドウ球菌に抗生物質ペニシリン※1とナスタチン※2を浸みこませたディスクを置いて培養したものです。
黄色ブドウ球菌は、ペニシリンディスクの周りに大きな阻止円が見られたことから、ペニシリンは黄色ブドウ球菌に有効、または、黄色ブドウ球菌はペニシリンに感受性であることがわかります。一方、ナスタチンでは阻止円が形成されなかったことから、ナスタチンは黄色ブドウ球菌には無効で、黄色ブドウ球菌はナスタチンに抵抗性があることがわかりました。
使用した抗生物質はペニシリン、ストレプトマイシン、カナマイシン、ナスタチン、そして微生物は黄色ブドウ球菌、大腸菌、酵母の3種類です。総当たり戦で薬剤感受性試験をしました。この実験は、医療現場や食品衛生、品質管理の現場で欠かせない技術の基になるものです。
昨年のRJP活動では、この薬剤感受性試験にヒントを得て面白い実験をした班があります。題して、『おにぎりの具材で一番抗菌効果があるのは何か?』。微生物を塗布した培地の上に、抗生物質の代わりに梅干しをのせると….
梅干しの周りに阻止円が形成しました!梅干しはおいしいだけでなく、微生物の繁殖を抑える効果もあるのですね。実習で学んだことを実践に生かす。基礎から応用へ良い学びにつながっています。この活動を主導していた学生のMさんは、現在は微生物の品質管理業務のある食品会社で働いています。
◆本日のバイテク用語№28◆
ペニシリン:細菌の細胞壁合成を阻害する抗生物質の1つ。グラム陽性、グラム陰性球菌に有効。ペニシリンの乱用により、ペニシリン耐性菌が出現している。
ナスタチン:主に酵母の1種カンジタ症の治療に以前使われていた抗生物質。細菌への抗菌作用はない。
微生物実習 バックナンバー
2020 身の回りの菌の培養方法(バイオ科 微生物学基礎実習 1年)〔013〕
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12月5日(日)『光る大腸菌!DNA実験に挑戦!』
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文責 宮ノ下いずる