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2024.08.16 バイオテクノロジー科

高校の教員向けセミナー2024『遺伝子組換えとゲノム編集はどう違う?』を開催しました 

専門学校 東京テクニカルカレッジ(TTC)バイオテクノロジー科(バイオ科)は今夏も高校の先生向けのセミナーを開催しました(2024年8月7日)。猛暑の中、複数の高校の先生にご参加いただき、ありがとうございました!

今年度は『遺伝子組換えとゲノム編集はどう違う?』をテーマに、遺伝子工学の実験体験と講話をセットにした内容でおこないました。

はじめに、TTCバイオ科の授業内容や卒業後の就職先について説明しました。高校の先生からは、「大学と専門学校での学びの違いがよくわかった。」「バイオ技術者として働く卒業生の姿が想像できた。」などの感想を頂戴しました。専門学校教育に興味をもっていただけて嬉しいです。

実験体験では、DNAのアガロースゲル電気泳動にチャレンジしてもらいました。まずは、ゲル作りです。泳動バッファー(1×TAE)を三角フラスコに40mL入れ、そこにアガロースを0.4g量り、加えます。フラスコの口に軽くラップをして、穴を開けてから電子レンジで温めました。「レンチンでアガロースを溶解するんですね!」と高校のD先生。台所にある電化製品でゲル作りをすることに驚かれていました。

熱で溶かしたゲルが少し冷めたら、GelRed(DNA蛍光染色色素)を加え、ゲル板に注ぎコームを刺して固めます。ゲルを固化させている間に、マイクロピペットの使い方をマスターしました。今回は、1000E、200E、20Eの3種類のマイクロピペットを準備しました。

「容量に応じてマイクロピペットを使い分けます。今回は、DNA溶液13μLを電気泳動で流しますので、20Eのマイクロピペットの使い方から学びましょう!」

固まったゲルからゆっくりコームを抜くと溝ができています。この溝にDNAサンプルを入れて電気泳動をします。本来は、水中で溝にサンプルを入れるのですが、まずは、そのまま溝に液体を入れる練習から。DNA溶液を13μL量り取り、溝に注入します。この操作を3回練習しました。

今回はPCRで増幅したDNAサンプルを電気泳動し、おおよその断片の大きさを確認することにしました。「これがPCRをかけたDNAサンプルです。このままアプライ(溝の中に注入する操作)はできないので、これにグリセロールと青い色素が入ったローディングバッファーを加えます。」と説明すると、高校の先生方は熱心にメモを取っていました。

ゲルを泳動槽にセットし、泳動バッファーで満たします。いよいよDNAサンプルを水中でゲルの溝の中に入れます。PCRで増幅したDNA断片の大きさを調べるために、DNAサイズマーカーとして、λDNA/HindⅢと100bpラダーマーカーを使いました。たくさん練習したので、水中でのアプライもみなさんスムーズにできました。

100Ⅴの電圧をかけ、DNAをマイナス極からプラス極に移動させます。泳動時間は約30分間です。この待ち時間を利用して、もう1つ実験をしました。ゲノム編集技術で誕生したシシリアンルージュハイギャバトマト1)とノーマルトマトのGABA量の測定です。

ミニトマト1粒をすりつぶしたら、トマト汁をイオン交換水で10倍希釈しました。その希釈したトマト汁50μLを使ってGABA量を測定し比較しました。GABA量の測定は、機能性アミノ酸簡易測定セット GABAエミール(株式会社 エンザイム・センサ)を使用しました。

1000E、200Eのマイクロピペットを使い分けながら試薬を添加しました。GABAが含有していると紫色に発色します。LEDの比色計で測定すると、ゲノム編集トマトは、ノーマルトマトと比較してGABA量が4倍ほど高くなりました。

味はどう違うのでしょうか。ゲノム編集トマトとノーマルトマトをみんなで試食しました。「GABAトマトの方が甘みが強い気がします。」と高校のO先生。私もそんな気がしました(*^^*)

電気泳動が終わりました。DNAの染色に使うエチジウムブロマイドは発がん性があるので、今回は低毒性で高感度のGelRedを使用しました。泳動後のゲルをゲル板からはずし、トランスイルミネーターに入れ、紫外線を当てると、640bp付近にPCRで増幅したDNA断片が検出できました。

セミナーの後半は、講話です。スピーカーは、TTCバイオ科で遺伝子工学の実習や座学を担当する大藤道衛 講師です。(先生の詳しいプロフィールはこちら

前半は、遺伝子組換えやゲノム編集の研究の歴史や作出方法、消費者や生産者のメリットや安全性について、後半は、アメリカで行われている遺伝子リテラシー教育と教材についてお話しいただきました。

私が、特に印象に残ったのは、すでにアメリカでは、1990年代に一般的な高等学校でも使える遺伝子組換え教材が開発されていたことです。また、遺伝子組換えの大豆を栽培し、葉から外来遺伝子を解析できる教育教材がキット化されて販売されていることも驚きました。アメリカでは日本と比べると、遺伝子工学教育が身近であることがわかりました。

今回のセミナーのテーマは『遺伝子組換えとゲノム編集はどう違う?』でした。遺伝子組換え技術は、その生物に外来遺伝子を導入する技術で、一方、実用化されている農畜産物育種のゲノム編集は、生物がもともと持っている遺伝情報を変更する技術です(SDN-1)。

また、遺伝子組換え体から導入遺伝子を検出するために、本校のバイオ科では、DNA抽出→PCR→電気泳動という流れで実験をしていることをお伝えしました。高校の先生方には、そのプロセスの1つであるDNAの電気泳動にチャレンジしていただきました。また、ゲノム編集でつくられたGABAトマトを試食し、通常のトマトとGABA量を比較する実験をおこないました。実験を通して、遺伝子工学技術をより身近に感じていただけたら嬉しいです。

セミナー後、高校の先生方から

「遺伝子組換えとゲノム編集の大綱がわかりすっきりしました。」

「実験ができてよかった。」

「学生スタッフや先生方がサポートしてくれてとてもやりやすかった。」

「受講者が少なめでよかった。」

「授業での実験のサポートが充実していることがわかった。」

など、たくさんの感想をいただきました。高校の先生のお役に立てたことが何よりも嬉しいです。

来年度も、TTCで実習体験&最先端のバイオテクノロジー講話が楽しめるセミナーを開催する予定です。専門学校教育や実験に興味がある高校の先生は、ぜひ、ご参加いただければ嬉しいです。お待ちしております。

1)シシリアンルージュハイGABAトマト:サナテックライフサイエンス株式会社よりご協賛いただきました。

🔶高校の先生向けセミナーのバックナンバー🔶

2022年度 バイオテクノロジー科 高校の先生向けセミナー 報告はこちら

2023年度 バイオテクノロジー科 高校の先生向けセミナー 報告はこちら

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文責:宮ノ下いずる【159】

 

 

 

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