品質管理の仕事につながる技術を学ぶ ~段階希釈塗抹法~ (バイオテクノロジー科 微生物学実習 1年)〔101〕
この食品、まだ食べられるかなぁ~。
ちょっと古くなった食品を見つけると、賞味期限や消費期限を確認したり、臭いをかいで食べられるかどうか調べた経験をお持ちの方もいるでしょう。食品の腐敗や、食中毒を引き起こす要因の大半は微生物によるものです。食の安全のため、食品が微生物に汚染されていないかどうかを検査することはとても重要です。
東京テクニカルカレッジ バイオテクノロジー科の微生物学実習では、こうした微生物検査につながる微生物の数を測定する実験があります。
今回、実験で使用する微生物は、黄色ブドウ球菌と酵母です。
まず、基本のおさらいをしましょう。黄色ブドウ球菌(細菌の一種で食中毒菌)と酵母(真菌の一種。カビのように菌糸をつくらない)は単細胞で生活する微生物です。これらを栄養培地にのせると、分裂(酵母は出芽)して細胞が1個から2個、2個から4個へどんどん増殖していきます。肉眼でも見えるほど増殖すると、培地上にはコロニーと呼ばれる菌の集合体が形成します。
1つずつ球状になっているコロニーを単コロニーといいます。単コロニーはもともと1つの菌から増殖したものです。ですので、単コロニーの数を数えると、はじめに培地にまいた微生物の数(生きている菌)を知ることができます。
ではさっそく、コロニーの数から菌数を計測する方法を紹介します。例えば、1ml中に数十億個の微生物が入った検体があるとしましょう。検体中の菌数があまりに多いので、そのまま培地に撒いて培養すると、数えられないほどのコロニーが形成してしまいます。そこで、菌液を生理食塩水で10倍ずつ希釈していき、10-6(100万倍希釈液)、10-7(1000万倍希釈液)、10-8(1億倍希釈液)をつくります。この操作を段階希釈といいます。段階希釈した菌液を培地に塗抹(菌を塗ること)して培養すると下図のようなコロニーが形成されます。
それぞれの培地のコロニー数を数えて、希釈倍率を掛け算すると、検体に含まれる菌数を算出することができるのです。(例 10-8の菌をまいた培地でコロニーが30個形成→30✕108個 30億個)
「段階希釈を成功させるコツは、希釈した菌液をしっかり攪拌してから次の希釈に使うこと。菌を塗抹する時のコツは火炎滅菌したコンラージ棒を熱いうちではなく、よく冷ましてから塗り広げること」と学生にアドバイスをする松井先生。
学生はしっかりメモをとりながら先生の話を聞いていました。
授業の後は山ほどの洗い物(笑)。微生物を培養した培地はオートクレーブで滅菌してから片づけます。今日も汗をかきながらたくさん実験しましたね。お疲れさまでした!みなさんが身につけた菌数計測の技術は、将来、食品会社の品質管理でおこなう微生物検査で役立ちます。
★微生物実習のブログ バックナンバー★
2020年 身の回りの菌の培養方法
2021年 薬剤感受性試験からの『抗菌効果が期待できるおにぎりの具材は?』
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文責: 宮ノ下いずる