硬度1500mg/Lのかた~い水がある!? 水の硬度測定 〈バイオ科 応用バイオ化学実験(分析化学)2年〉〔036〕
こんにちは、バイオ科の宮ノ下です。
新年度が始まり1ヵ月が経ちました。バイオ科では、ゴールデンウィーク明けから1年生も2年生もCOVID-19感染防止対策をしながら実験漬けの日々を送っています。
すでにTTCのバイオ科の授業内容をご存知の方もいると思いますが、ここで改めて、バイオ科では、2年間でどんなことを学ぶのか、簡単にご紹介したいと思います。
バイオテクノロジーとは、バイオロジー(生物学)とテクノロジー(技術)を合わせた言葉で『生物の力を使って、医療、農業、環境、バイオエネルギー分野の技術開発を行い、私たちのくらしを豊かにすること目指す学問』です。TTCのバイオ科では、特に、医療、食品業界で必要な化学分析、生物化学分析(生物分析)の2種類の技術と知識を2年かけて学んでいきます。
〈TTCバイオ科で学ぶ化学分析〉
水、食品、医薬品の成分が何であるか、また、その成分の量を分析する実験を行います。
〈よく使う器具〉
三角フラスコ、ビュレット、メスフラスコ、ホールピペットなど
〈よく使う機器〉
分光光度計、HPLC、GCなど
〈化学分析実験に向いているのはこんな人!〉
危険な試薬も多く使うので注意力、集中力をもって取り組める人が向いています。また、サンプル0.001gを精秤するなど、精密な操作が求められるので、慎重で手を抜かない人が向いています。
〈10mlから2000mlまで大小さまざまなメスフラスコがあります〉
〈TTCバイオ科で学ぶ生物分析〉
マウス、植物、動植物の細胞、微生物を使って生体成分の分析や生体反応(酵素反応や免疫反応など)の分析を行います。
〈よく使う器具〉
シャーレ、培養ピペット、遠心管、乳鉢、試験管など
〈よく使う機器〉
インキュベーター(培養器)、振とう機、クリーンベンチ、遠心分離機、電気泳動装置、顕微鏡など
〈生物分析に向いているはこんな人!〉
生物相手なので実験結果が白黒はっきりしないこともあります。そんな時「失敗した」と落ち込むのではなく、「なぜだろう?」と探求心をもって取り組める人はこの分野に向いていると思います。また、長期培養が必要なことがあるので、最後まであきらめず粘り強く取り組める人も向いています。
〈動物細胞を倒立位相差顕微鏡で観察中♪〉
バイオ科の授業内容をもっと知りたい方は、ぜひTTCホームぺージのバイオ科紹介をご覧ください。こちら
今回は、化学分析の中から、今期2年生が行っている応用バイオ化学実験2(分析化学)をご紹介します。私が見学した時は、キレート滴定※という方法で水の硬度を調べる実験をしていました。
〈ビュレットやホールピペットをたくさん使います〉
今回、実験で使う水は、『富士山系の天然水』とフランス産の硬水『Contrex ;コントレックス』、そして『東京の水道水』の3種類。硬度は、水に入っているカルシウムやマグネシウムなどのミネラル量で決まります。WHO(世界保健機構)では、1Lあたり硬度が120㎎未満だと軟水、120㎎以上だと硬水と定めていますが、今回検水した水の硬度はどのくらいでしょうか?
〈天然水とフランスの硬水Contrex〉
水の硬度は、水中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンの量をこれに対応する炭酸カルシウムのmg/L(ppm)に換算して計算します。2年生は、カルシウムとマグネシウムを合算した全硬度と、カルシウム硬度を測定していました。
〈EDTA2Na溶液をビュレットに入れてキレート滴定の準備をします〉
キレート滴定の手順を説明します。あらかじめ検水のpHを約10に調整し、EBT(エリオクロムブロックT)を指示薬として加えます。EBTはpH10では青色ですが、CaイオンやMgイオンなどの金属イオンがあると、キレート化合物を生成し赤色になります。ここに、EBTよりも強力なキレート試薬※であるEDTA2Na溶液を滴下していくと、EDTAの方がCaやMgとキレート化合物を作りやすいので、EBTと結合していた金属イオンがはずされ、EDTAと結合していきます。最終的に、遊離したEBTが残り溶液は赤から元のEBTの色である青になります。
〈キレート滴定の原理をイラストで説明〉
〈キレート滴定でEBTの色の変化を見る〉
EBTが青に変わるまでに使ったEDTA2Naの滴定量から炭酸カルシウムの濃度に換算して、硬度を算出します。7班の結果を見てみましょう。天然水20mLあたり、EDTA2Naの滴定量は1.04mL。ファクター値も入れて計算すると、全硬度は50.89㎎/Lでした。ということは、天然水は軟水ですね。続いて、コントレックスです。EDTA2Na の滴定量は32.42mLだったので、計算すると全硬度は1593.20㎎/Lになりました。なんと1500㎎超えの超硬水です!コントレックスのラベルを見ると、硬度1468㎎/Lと記載されており、学生の実測値と似ています。こんなに硬度が高い水が本当にあるとは知りませんでした。
〈班ごと水の硬度を計算しました〉
〈コントレックスの硬度〉
炭酸カルシウムは下剤としても使用されるので、硬水を飲みすぎると下痢になると聞いたことがありますが、硬度1500の超硬水は、いったいどんな味がするのか興味をそそられます。早速、天然水とコントレックスを恐る恐る飲み比べてみました。これはあくまで私の感想です。天然水は、まろやかで口当たりがよく飲みやすいのに対し、コントレックスは飲み慣れていないせいか、「ごっくん」と飲みこみにくいのです。説明するのが難しいですが、軟水は細胞に浸透していく感じですが、硬水は細胞に浸みこみにくく口に残る感じです。
以前、卒業研究で軟水と硬水はどんな料理に適しているのかを調べた班がありました。軟水と硬水でコーヒー、紅茶、みそ汁を入れたり、だしをとったり、パスタをゆでたり、米を炊いて比較していました。今はコンビニでもいろんな水が簡単に手に入ります。それぞれの水を飲み比べてみるのも面白いですね。私はこれまで硬水を飲んだことがありませんでしたが、硬水はミネラル補給や便秘解消に効果があると言われているので、お気に入りの硬水を探してみようと思います。みなさんが好きな水は何ですか?
来週のブログもどうぞお楽しみに★
◆本日のバイテク用語 №21◆
キレート試薬:カルシウムイオンやマグネシウムイオンなど金属イオンを捕捉する化合物です。その分子構造は、イメージ的に言うとカニのハサミのような形をしています。そのハサミの部分が金属イオンを包みこむようにして結合します。最も一般的なキレート試薬にEDTA2Na(エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム)があります。
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東京テクニカルカレッジ バイオテクノロジー科 (@TTCbio)
文責:宮ノ下いずる