『カラム』から手作り!ゲルろ過クロマトグラフィー(バイオ科 バイオ化学実験 1年)〔017〕
実験準備室には学生が作った千歳飴のような「カラム」が所狭しと並んでいます。はは~ん、あのタフな実習が始まったようですね♪
タフな実習、それは4期から始まったバイオ化学実験です。担当は、松井奈美子先生です。
この実習では、ゲルろ過クロマトグラフィーで目的のタンパク質を分離するのですが、このとき、「カラム」を使います。カラムとは、物質の分離などに用いる円筒状の容器です。バイオ科では、クロマトグラフィーの原理を理解するため、カラムから手作りしています。(実は…購入すると60㎝のカラム1本9万円!?)
Sephacryl(セファクリル)というゲルろ過に使う担体を、プラスチック容器に入れ充填(じゅうてん)しながらカラムを作ります。ちょっとでも気泡が入ったらやりなおし。慎重に担体を入れていきます。
〈気泡がないか、ライトを当ててチェックする様子〉
ここで、ゲルろ過クロマトグラフィーについて簡単に解説しましょう。ゲルろ過クロマトグラフィーはカラムにつめた担体にサンプルを通して、大きさの違いで分子を分離する方法です。例えば、「ふるい」をかけると小さい粒子が先に落ち、大きい粒子が残りますが、ゲルろ過クロマトグラフィーは「ふるい」とは逆で、大きい粒子が速く移動し、小さい粒子が後から回収されます。このしくみを下の手書きの図で説明します。
大きさの異なる分子をカラムの上にのせると、分子はカラム内の担体の間をすり抜けて溶出されます。担体には小さな孔が開いていて、小さい分子はその孔に入り込んで寄り道をするため、大きい分子が速く、小さい分子は遅く溶出されます。この原理を利用して生体分子を分離することができるのです。
今回は、大腸菌で発現させたβガラクトシダーゼ(酵素タンパク質)を分離するために、大腸菌の抽出液をカラムに通しました。酵素タンパク質は透明なので、目印のために色素と一緒にカラムに通します。
大きい粒子の青い色素と小さい粒子の赤い色素の間に目的の酵素があります。青と赤の色素の間で溶出した溶液を数滴ずつ約20本のマイクロチューブに回収しました。20本のチューブのどこかにβ-ガラクトシダーゼが入っているはずです。次回はどの分画に目的の酵素が入っているのかを調べるため、酵素活性やポリアクリルアミド電気泳動を行う予定です。
1年生の実習も4期に入り、だんだん専門的な内容になってきましたね。
次回のブログもお楽しみに!
バックナンバー
他にゲルクロマトグラフィー実験を紹介したブログはこちら
◆本日のバイテク用語№11◆
βガラクトシダーゼ:βはベータと読みます。βガラクトシダーゼは乳糖(ラクトース)をブドウ糖とガラクトースに分解する酵素です。通常、大腸菌はグルコースをエネルギー源として増殖しますが、グルコースの代わりにラクトースを入れて培養すると、大腸菌がβガラクトシダーゼを発現し、ラクトースを分解してグルコースをつくり増殖します。
文責: 宮ノ下いずる