『はたらく細胞』培養中♪ (東京テクニカルカレッジ バイオテクノロジー科 バイオ総合実験1(動物)2年)〔016〕
「ば い ば い 菌 だ!」
この台詞を知っていますか?
これは、マンガ『はたらく細胞』で、白血球(好中球)が病原菌を撃退した後につぶやく決め台詞です。『はたらく細胞』は、体内の細胞を擬人化して描いた人気マンガです。多少大げさな描写もありますが、擬人化されたキャラクターのおかげで、複雑な体内の免疫のしくみをドラマ仕立てでわかりやすく学べます。昨今は、こうした学習マンガがきっかけでバイオ分野に興味をもつ学生が多いかもしれませんね。
このマンガでは、白血球や血小板、リンパ球、マクロファージといった免疫にかかわる細胞が数多く登場します。本校のバイオ科では、マンガにも登場するリンパ球の培養およびリンパ球から発現するタンパク質の検出技術を学べる実習があります。
今回は、免疫学の知識と技術が身につく「バイオ総合実験1(動物)」をご紹介します。
講師は、慶應義塾大学医学部の研究室で免疫担当細胞を使ったアレルギー(自己免疫疾患)研究を指揮する吉本桂子先生です。
はじめに、マウスの生体から胸腺や脾臓を摘出し、『はたらく細胞』にも登場するリンパ球を培養します。
〈学生に実験の手順を説明する吉本先生〉
〈クリーンベンチで細胞を扱う学生〉
〈血球計算盤上に脾臓由来のリンパ球をのせて光学顕微鏡で観察した様子400倍〉
上の写真をよく見てください。血球計算盤のマス目に小さな球状の細胞が観察されるでしょう。これが脾臓から単離された「リンパ球」です。直径はわずか5μm。リンパ球は、さまざまな濃度のLPS※を添加した培地に懸濁(けんだく)し、24穴のマルチプレートに入れて培養します。
〈37℃、5%CO2の培養条件下で培養を開始したリンパ球〉
培養4日後、リンパ球を顕微鏡で観察すると、LPSの刺激をうけて細胞の集合体が観察されました。
〈倒立位相差顕微鏡での細胞観察を指導する吉本先生〉
〈脾臓由来のリンパ球 LPS 10μg/mL添加ウェル 100倍〉
LPSの濃度や細胞の種類によって、活性化する様子が違います。脾臓と胸腺ではLPS刺激によって細胞の集合体の形成が異なる様子が観察されました。
続いて、リンパ球からタンパク質(IL-6)が発現しているかどうかを調べるためELISA※を行いました。96穴のELISAプレートにIL-6の抗体をコーティングし、リンパ球培養液に含まれるIL-6と抗原抗体反応をさせました。
〈ELISAをおこなう学生〉
〈吸光値を測定するマイクロプレートリーダー〉
〈互いのELISAの結果を比較する学生〉
脾臓と胸腺に存在する免疫細胞の種類が異なります。IL-6タンパク質は、細胞種によって発現の様子が異なることがわかりました。
実験結果はレポートにまとめ提出することになっています。
バイオ科では、現在、動物細胞の培養技術を学べる実習が2つあります。
基礎的な培養技術を学ぶ『細胞工学実習』と、今回のブログの内容であるリンパ球を培養し、細胞から発現したタンパク質を検出する『バイオ総合実験1(動物)』です。両実習を通して、動物細胞培養技術を身につけていきます。
来週のブログもお楽しみに☆
『細胞工学実習』の授業風景のブログはこちら
◆本日のバイオ用語な№10◆
①LPS(Lipopolysaccharide; リポポリサッカライド):グラム陰性細菌の成分。免疫系の細胞を活性化します。具体的には、LPSが免疫細胞のTLR4(トールライクレセプター4)に刺激を与えることで、免疫細胞がタンパク質の一種であるサイトカインを放出します
。
②ELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay;エライザ):試料中に含まれる抗体あるいは抗原の濃度を検出・定量する際に用いられる方法です。今回はサイトカインの1種のIL-6の発現をELISAで確認しています。
文責:宮ノ下いずる