卒業生インタビュー きっかけはTTCバイオ Part7 『目的意識を持ちながら取り組むことが大事! 仕事も学生時代の実験も』(バイオテクノロジー科)〔121〕
卒業生の働く姿を見てみたいと、ある企業を訪問した。この会社には、TTC(東京テクニカルカレッジ)の卒業生がたくさん働いている。見学を終え、会議室で待っていると、ひときわ輝きを放つ女性が近づいてきた。その笑顔はもしかして…15年前にTTCを卒業した大森さんだ。
学生の頃は、いつも底抜けに明るくムードメーカーの印象だったが、その魅力に磨きがかかり、今では周りへの気配りができる、洗練された社会人になっていた。
「大森さん、久しぶり。素敵に歳を重ねているなぁと嬉しくなっちゃったよ。突然だけど、魅力の秘訣を知りたいので、卒業生インタビュー受けてくれない?」とアタックすると、「えーー!恥ずかしいけど、私で良ければ喜んで。」と優しい笑顔で快諾してもらった。
今回は大森さんに学生時代を振りかえってもらい、TTCでの学びが今の仕事にどのように役立っているのか、また、TTCで学ぶ在校生へ先輩としてエールをおくってもらった。
〈TTCを志望した理由〉
高校時代は読書が好きな文系の学生でしたが、高2の理科で誤って(笑)化学を選択してしまったことがきっかけで、化学の面白さに目覚めました。
それまで成績は赤点常連でしたが、選択したのにビリにはなりたくない!と、毎日、帰宅後に高1の内容から復習しました。真面目に授業に取り組んでいくと、どんどんわかるようになってきて「もっと勉強してみたい」と欲が出てきました。
そんなことで3年生の春頃に理系に転身しました。しかし、文系科目で大学受験を考えていたので、数学の勉強がなかなか追いつかず、それなら専門学校でより技術的な内容を学ぼうと決めました。TTCのHPを見て、学校見学に参加し、実習に力を入れていることや、カリキュラムがしっかりしていることに魅力を感じ、志望しました。
〈学生時代の思い出〉
①イベント
よく覚えているのは学園祭で「アルギン酸ビーズ作り」の理科実験教室を開催したことです。当時は大人がやって楽しめるのかな(ごめんなさい)と思っていましたが、今振り返ると、いろんな世代や地域の方たちと交流できる内容だったんだなと感じています。
他には、長野研修で鏡池(湖?すみません曖昧で)の水質検査をしたことを覚えています。
②先生
先生方のことはよく覚えています。
いつも厳しくも優しい松井先生、おちゃめで明るい宮ノ下先生、穏やかでもきらりと目を光らせて見てくださる大江先生、優しいけど、時折ちょっと毒舌になる大藤先生、面白い松延先生、個性的な先生方の授業はどれも面白かった記憶があります。
冷静で辛口な佐藤先生に卒業研究をみていただき、いつも厳しいながらも正直なコメントをいただきました。いつしかその辛口のコメントが癖になって喜んでいたことを思い出します(笑)。今でも先生方がTTCで教えていらっしゃると伺い、とても嬉しいです。
③授業や卒業研究
実習が多かった記憶があります。卒研ではウナギのエストロゲンを調べた記憶がありますが、もう十数年以上前のことなので詳細に思い出せません…。
実習ではガスクロ分析や微生物試験、卒研でも使用したHPLCなど、どれも業務で使用しています。TTC時代は微生物学実験が苦手でしたが、時間外で何度も実験させてもらったり、実技試験で操作をしっかり見てもらったことを覚えています。
④友人
卒業して十年以上が経ち、住んでいる場所や生活もバラバラですが、TTCで知り合った同級生とは今でも繋がっていて学生時代の話をすることもあります。研究科でも一緒だった友人とは、子どもを連れて学園祭に行きたいねとよく話をしています。
⑤就職活動
一般的に言われる「ガツガツした就職活動」はあまりしていなかったのですが、歴代バイオ科卒業生が就職している企業から求人があった際に、先生方に教えてもらいました。そのご縁で就職したのが今の会社です。実験や分析の仕事がしたいと感じていたので、現在の品質管理業務は自分にぴったりの仕事だと感じています。
〈バイオ科での学びが現在の仕事に生きていると思うこと〉
学生時代は決して実験が上手いとは言えず(今もですが)、授業も積極的に取り組んでいたかと聞かれると…先生方も苦笑していることでしょう。模範的な学生ではなかったかもしれませんが、TTCの実習で身につけた技術は自分の武器になりました。
入社直後に、会社の先輩に「実験慣れしているね」と褒められたことが忘れられません。
〈TTCバイオ科の在学生に向けてエールをお願いします〉
会社で使っている装置は、メーカーが違えば取扱い方法が違います。また、やったことのない分析や装置を使用しなければならないこともあるので、大変なことも多いです。しかし、「何のためにその実験をするのか」という目的をしっかり認識していれば、おのずと「すべきこと、すべきでないこと」がわかってくると思います。目的意識を持ちながら取り組むことは学生時代の実験でも、仕事でも共通して大事なことです。
とはいえ、学生時代は眠くて授業中にウトウトしてしまうこともあるでしょうし、実験を失敗することもあるでしょう。でも、バイオ科の先生なら、やる気のある人を見捨てずフォローしてくれるはずなので、安心してついていってくださいね(笑)。
大森さんは、現在、食品会社の化成品部門で食品添加物や医薬品原薬の品質管理に携わっている。製造に使用する原料の品質に問題はないか、また製造された製品が出荷規格に適合しているかなどを確かめるため、日々いろいろな分析を行っているようだ。
彼女が醸し出す充実オーラには仕事の満足度がありそうだ。TTCを卒業した学生が自信を持ちながら働いているのが嬉しい。新型コロナが明けたら、同級生に声をかけて、ぜひ子どもを連れてTTCバイオ科に遊びに来てほしい。教員一同楽しみに待っています。
◆卒業生インタビュー バックナンバー◆
Part1 西尾さん(2008年 バイオ科卒)『植物とペンギンが好き!仕事も趣味も楽しむ生き方』
Part2 植竹さん(2008年 バイオ研究科卒)『専門学校で培った経験を武器にクラフトビール業界に旋風を巻き起こす!』
Part3 今野さん(2020年 バイオ科卒)『文系大学を出てから専門学校でバイオ技術を学ぶ!医薬品開発を仕事に』
Part4 吉野さん(2021年 バイオ科卒)『私が証明します いつからでも学び直せる!』
Part5 今村さん(2016年 バイオ科卒)『大学を中退して専門学校へ 挫折経験をバネに電力業界で働く』
Part6 西村さん(2021年 バイオ科卒)『実験を貪欲に取り組んだ学生時代 あの時の経験が今の私を支えています』
文責: 宮ノ下いずる