実験技術と知識の両方身につけたら無敵! 中級バイオ技術者認定試験の活用法 (バイオテクノロジー科)〔110〕
いよいよ中級バイオ技術者認定試験※が近づいてきました。
バイオ技術者認定試験(以下 バイオ試験)とは、バイオテクノロジーの基盤となる化学や生物学の知識を持ち、実験を適切・安全に行う能力を認定する試験です。毎年、東京テクニカルカレッジ(TTC)のバイオテクノロジー科(以下 バイオ科)ではバイオ技術を2年間学んだ2年生がこの資格試験の中級にチャレンジしています。
※日本バイオ技術教育学会が実施している認定試験
この資格試験で大切にしていることは、過去問題を繰り返し解くだけでなく、身についた知識を実験に役立ててもらうことです。
中級バイオ試験は「バイオテクノロジー総論」「生化学」「微生物」「分子生物学」「遺伝子工学」の5科目からなります。特に「遺伝子工学」は実験の手順や原理、ノウハウが多く出題されるので、実験後のまとめに中級バイオ試験問題を活用しています。
たとえばDNAの抽出実験では、以下のような過去問を知識の確認に使います。みなさんはこの問題が解けますか?
問題) Tris飽和フェノールを調整する際に、8-ヒドロキシキノリンを加える理由はどれか。
a)固化防止 b)タンパク質吸着 c)酸化防止 d)着色 e)DNaseの活性阻害
①a,b ②a,e ③b,c ④c,d ➄d,e
これは、Tris飽和フェノールを作ったことがない学生にはなかなか難しい問題だと思います。正解は、④です。8-ヒドロキシキノリンはフェノールの酸化を防ぐために添加されます。添加後、フェノールは黄色に着色します。TTCバイオ科の学生は、自らこの試薬を作製しているので、実験から学べるのが強みです。
フェノールは毒性や腐食性があり、皮膚につくと薬傷をひきおこすため、実習では手袋、保護メガネをかけて使います。Trisフェノールの作り方や使用目的については『本日のバイオ用語』にまとめましたので興味のある方はご覧ください。
学生には確かな技術と知識を兼ね備えたバイオ技術者を目指してほしい。2021年度の中級バイオ試験の合格率は87%でした。今年も、100%を目指して頑張りましょう!
◆『本日のバイオ用語』◆
Trisフェノール(pH8.0)はゲノムDNAやプラスミドDNAを抽出時に、細胞の抽出液からタンパク質を分離、除去するために使用する試薬です。フェノールは凝固点が高いため、常温で固体です。60℃で融解した後、フェノールの酸化を防ぐのために添加するのが、上記の問題で登場した8-ヒドロキシキノリンです。8-ヒドロキシキノリンを入れるとフェノールは黄色になります。その後、Tris-HCl(pH8.0)を加え、よく攪拌して平衡化Tris飽和フェノールをつくります。
なぜ水ではなくTris-HCl(pH8.0)をフェノールに加えるのか。もちろん、その理由も実習で学びます。フェノール自体はもともと弱酸性なので、フェノールをDNAが安定する弱アルカリ性(pH7.5~8.0)にpHを変える必要があるのです。
東京テクニカルカレッジ バイオテクノロジー科 講師紹介
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文責:宮ノ下いずる