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学科ブログ

2026.03.16 バイオテクノロジー科

卒業生インタビュー きっかけはTTCバイオ Part8『東大大学院から専門学校へ 古生物研究の情熱を、バイオ検査のスペシャリストとして活かす』

「東京大学大学院で古生物を研究していた学生が、TTCに入学してくるらしい」

入学前からバイオ科内はその噂で持ち切りだった。正直なところ、当時の私は「東大生に、私が教えられることなどあるのだろうか」と、少し身構えていたのを覚えている。

私自身、映画『ジュラシック・パーク』の恐竜再生に魅了されてバイオテクノロジーの道に進んだ人間だ。それだけに、古生物の世界に身を置いてきたSさんには、人一倍強い興味を抱いていた。実際の彼は、輝かしい経歴を持ちながらも驚くほど謙虚で、常に穏やかな佇まいの学生だった。

昨年、社会人になった彼とお酒を酌み交わす機会があった。そこで快諾してくれたインタビュー。実は、受け取った原稿の内容があまりに濃密で、どうまとめ上げるべきか悩み抜くうちに1年が過ぎてしまった。待たせてしまった彼には、この場を借りて詫びたい。

異色の経歴を持つSさんは、なぜ学び舎にここを選んだのか。まずはそのきっかけから、じっくりと紹介したい。

T・Sさん (民間の検査会社で働く技術者)
2020年TTCバイオテクノロジー科卒業

——  東京大学大学院で古生物を研究されていたそうですが、なぜTTCに入学したのですか?

昔から生物に興味があり、将来は生物系の仕事に就きたいと漠然と思っていました。学生時代は古生物や考古学といった「昔のこと」に加えて岩石にも興味があり、古生物を学びたいと思い大学院まで進みました。

念願だった古生物研究に携わることができ、このまま研究者や学芸員になれたらと考えていましたが、研究を進める中で、これらの職業は生活の面でとても不安定であることを実感し、卒業を機に就職を決意しました。

そこで改めて自分の興味を考えたとき、やはり生物分野に関わる仕事がしたいと思いました。ただ、いわゆるバイオ系の知識や実験経験がほとんどなかったため、まず基礎知識と実験技術を身につける必要があると感じました。

学校を調べる中で東京テクニカルカレッジ(TTC)のバイオテクノロジー科を見つけました。2年制であること、授業内容が自分の学びたいことそのものだったこと、そして見学した際に雰囲気がとても良かったことが決め手でした。先生方も「来るもの拒まず(笑)、最後まで面倒を見てくれる」という印象を受け、安心して学べると感じ入学を決めました。

——  学生時代に印象に残っている授業はありますか?

授業では、毎回その日の内容をまとめる課題や確認テストがあり、授業前後で内容を整理できる仕組みがとても良かったです。先生方のプリントや板書も図や絵が多く、要点が整理されていて勉強が楽しかったです。今でも時々見返して知識の確認をしています。

特に印象に残っている授業は2つあります。

1つ目はマウスの解剖です。解剖の前に数週間マウスの世話をするのですが、自分のマウスが一番可愛いと主張するほど愛着がわきました。いざ解剖となると、人によって反応が全く違うのも印象的でした。私は、無意味に命を断つのではなく内部構造を学ぶためだと考え、命を提供してくれたことに感謝して取り組みました。実際に内部構造を目で見ることの大切さを実感しました。

もう1つは細胞培養実習です。毎日細胞を観察して順調に増えていくのを見るのは、自分の手技に問題がなかったという安心材料になりました。自分で計算した試薬を加え、予想通りの結果が得られたときはとても嬉しかったのを覚えています。

 

——  学生生活で印象に残っている出来事はありますか?

長野研修と学園祭が特に印象に残っています。

長野研修は自然の中での調査や採取など野外活動が好きな私にとって、とても楽しい時間でした。ただ、最終日前日の発表準備で夜はかなり忙しく、もう少しゆっくりしたかったという心残りはあります。今度は引率として参加できたらいいなと密かに思っています。

学園祭では、人生で初めて女装を体験しました(笑)。GUで初めて買ったものが女性用の靴という黒歴史もできましたが、良い思い出です。

——  卒業研究は外部の大学へインターンに行かれたそうですね。

はい、順天堂大学医学部の神経学講座でインターンとして研究させていただきました。

バイオ科の皆と離れて一人で進めるのは正直寂しさもありましたが、医学分野の最先端に触れる滅多にない機会だと思い決断しました。4ヶ月でデータを出す焦りもあり、人生で一番濃密で、とてつもなく大変で、そして有意義な時間でした。この機会をくださった大藤先生には今でも感謝しています。

 

——  TTCの先生方との学びはどう感じていましたか?

これまでは先生という存在に壁を感じて一人で抱え込みがちでしたが、バイオ科の先生方はとにかく距離が近く、相談しやすかったです。おかげで、今の仕事でも些細なことを上司に相談することに抵抗がなくなりました。先生方が一人ひとりを本当によく見てくださっていたからこそだと思います。

 

——  現在はどのようなお仕事をされていますか?

現在は民間の検査会社で働いています。バイオテクノロジー科で学んだ内容は本当に仕事に直結しており、日々役立っていると感じています。
特に松井先生の実験演習で学んだ試薬調製、段階希釈、検量線作成、培地作成、細菌観察などは、実際の検査業務でそのまま使う場面が多くあります。授業で行った手順とほとんど同じ検査もあり、スムーズに仕事を覚えることができました。現在は多くの検査を任されるようになっています。

 

——  これからの目標を教えてください。

入社3年目(2024年当時)となり、携われる検査も増えてきました。今後は検査精度をさらに高め、検査のスペシャリストになることを目指しています。
「この検査は彼に任せれば安心だ」と言ってもらえるような存在になりたいです。また、将来的には検査体制の効率化など運営面にも関わっていければと考えています。

 

——  在校生へのメッセージをお願いします。

就職活動はとても大変ですが、まずは自分なりの目標を立てると乗り越えやすいと思います。私の場合は「夏前までに1社は内定を取る」という目標を立てていました。理由は単純で、暑い時期にスーツを着たくなかったからです。

また、自己分析はとても難しいものです。自分のことは自分が一番分からないものなので、先生や周りの人に意見を聞くと良いと思います。
そして面接では、等身大の自分でいることが大切です。無理に良く見せようとすると、相手は人を見るプロなので必ず見抜かれます。正直な自分を受け入れてくれる会社の方が、安心して働くことができます。

皆さんが希望する企業に就職できることを心より祈っています。

「今の仕事では、大学院時代に培った考察力はもちろんですが、TTCの実習で身体に叩き込んだ『正確な手技』が大きな武器になっています」と語るSさん。現場の第一線で、専門家として着実に信頼を積み重ねている様子が言葉の端々から伝わってきた。

学生時代の彼は、とにかく洞察力が鋭かった。特に印象に残っているのは、植物細胞工学実習のプロトプラスト単離の実験レポートだ。多くの学生が手順や結果をまとめる中で、彼は顕微鏡で見える細胞の大きさや葉緑体の密度から、「どの組織由来の細胞なのか」までを独自に考察していた。後にも先にも、そこまで緻密なレポートを書いた学生は、私の教員生活で彼ひとりだけである。

TTCバイオ科には、高校卒業生から社会人、留学生、そして彼のような大学院修了者まで、実に多様な背景を持つ人々が集まる。価値観の異なる仲間と同じ実験台を囲み、試行錯誤する時間は、教員である私にとっても何物にも代えがたい刺激的なひとときだった。

東大院卒という肩書きに甘んじることなく、常に目の前の現象を深く見つめ、学び続けた彼なら、これからも独自の視点で業界を切り拓いていくはずだ。Sさんのさらなる飛躍を、これからもずっと応援し続けたい。

◆卒業生インタビュー バックナンバー◆

Part1 西尾さん(2008年 バイオ科卒)『植物とペンギンが好き!仕事も趣味も楽しむ生き方』

Part2 植竹さん(2008年 バイオ研究科卒)『専門学校で培った経験を武器にクラフトビール業界に旋風を巻き起こす!』

Part3 今野さん(2020年 バイオ科卒)『文系大学を出てから専門学校でバイオ技術を学ぶ!医薬品開発を仕事に』

Part4 吉野さん(2021年 バイオ科卒)『私が証明します いつからでも学び直せる!』

Part5 今村さん(2016年 バイオ科卒)『大学を中退して専門学校へ 挫折経験をバネに電力業界で働く』

Part6 西村さん(2020年 バイオ科卒)『実験を貪欲に取り組んだ学生時代 あの時の経験が今の私を支えています』

Part7  大森さん(2008年 バイオ科卒)『目的意識を持ちながら取り組むことが大事! 仕事も学生時代の実験も』

Part8  T・Sさん(2020年 バイオ科卒)『東大大学院から専門学校へ 古生物研究の情熱を、バイオ検査のスペシャリストとして活かす』

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文責:宮ノ下いずる【194】

 

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