バイオ科先生の自由研究 ~走査型電子顕微鏡(SEM)によるコクゾウムシの構造観察~〔096〕
学生が夏休みを満喫している間、専門学校の先生は何をしていると思いますか。
授業がなくても案外いろいろやることはあります。例えば、バイオ科の場合、実習室の掃除、夏休みの高校生向けイベントの開催、講習会への参加、学生が提出したレポートやノートのチェック、そして来期の実習や講義の準備などです。
先日、高校生向けの実験体験イベントの教材作りのため、コクゾウムシを実体顕微鏡で観察していると、バイオ科の大江先生が声をかけてくれました。
「これは、ゾウムシですね。電顕で観ると、複眼の様子などもはっきり見えますよ。」
えっ、電顕?使っていいんですか?
バイオ科の大江先生は走査型電子顕微鏡(SEM)操作のプロフェッショナル。わざわざ虫の観察のためにSEMを動かして頂けるとはありがたい。ご厚意に甘えて、観察をお願いすることにしました。
では、さっそく、大江先生と一緒に『SEMでコクゾウムシの体の構造観察』はじまりはじまり~。
バイオ科の機器分析室には走査型電子顕微鏡(SEM)があります。
大江先生は棚から工具箱を取り出しました。中には柄付き針、ピンセット、ねじなどの工具がいっぱい。
先生は、ピンセットでエタノール漬けしたコクゾウムシを1頭つかみ、金属の試料台へのせました。
「導電性のない試料は電顕で観察しにくいので、電気が通るようにコクゾウムシを金でコーティングします」と大江先生。
SEMは電子線を照射し、試料から反射する二次電子を検出して画像を作り観察します。試料を電子顕微鏡で観察するには試料表面の帯電を防ぐために試料の表面を金属でコーティングします。
コクゾウムシがのった試料台を円柱形の筒の中へ。これは、スパッタ装置といいます。この装置で、コクゾウムシの体の表面を金(Au)でコーティング(スパッタリング)します。
スイッチオン!スパッタ処理が始まると、内部が怪しげな紫色に光りだしました。この光の中を金粒子が飛んでいるようです。数十秒で処理を止め、スパッタ装置から試料を取り出すと….
あっ!コクゾウムシが黄金色に大変身。
いよいよ金蒸着したコクゾウムシを、SEMにセットして観察していきます。
まず、SEMの内部を真空にし、電子線を試料に当てて表面を観察していきます。
画像を見ながら、観察対象を移動したり、フォーカスを調整したり、倍率をあげたり…
大江先生の華麗なSEM操作は、お見事としか言いようがありません。
コクゾウムシって体表にこんなに細かい毛が生えているんですね!複眼も観察されました。複眼は6角形の個眼がたくさん集まっていました。こんな多くの眼を使ってモノを見ている昆虫は、頭の中でどうやって画像処理をしているのでしょうね。
昼休憩のため、職員室に戻ると建築科の先生方が集まって何やらワイワイ楽しんでます。
何をしているのでしょうか。
どうやら竹ひごで橋を作り、橋の強さを何㎏のペットボトルの重さに耐えるかで競い合っているようでした。高校生のイベントでは橋づくりを体験してもらうのですね!
今回のブログは、学生が夏休み中の教員の様子をご紹介しました。
東京テクニカルカレッジは、教員も楽しむことに貪欲です!
■お知らせ■
バイオ科ブログは、8月12日(金)、19日(金)にお盆休みを頂きます。
次回は8月26日に掲載致します。
宜しくお願い致します。
文責:宮ノ下いずる