毎日じめじめした天気が続き、気分も沈みがちな6月。そんな憂鬱な気持ちを払拭してくれるのが色鮮やかなアジサイです。専門学校 東京テクニカルカレッジ（TTC）の近くには私のお気に入りの路地があり、今そこで咲いている変わり種のアジサイが元気をくれます。

ところで、アジサイについて、とても気になっていることがあるのです。学校の最寄り駅である東中野の駅前には山手通り(317号線）があります。その車道と歩道の分離帯の植栽にアジサイが植えられているのですが、北に向かって左側の歩車道分離帯のアジサイはすべて青色なのに、車道を挟んで右側のアジサイはすべて赤紫色なのです。不思議だと思いませんか。

以前、アジサイは土壌のpH（酸性かアルカリ性かの程度を示す物質量）で咲く色が変わると聞いたことがあります。酸性土壌だと花の色は青っぽく、アルカリ土壌だと赤っぽくなるという話です。花に含まれるアントシアニンという色素がpHの違いで色を変えるからということらしいのですが、この話は山手通りのアジサイの花の色にも当てはまるのでしょうか。

色の違いは品種の違いなのか？それとも、土のpHの違いが花の色の違いに現れているのか？ああ、気になる気になる。それぞれの植え込みの土のpHを実際に測定してみたい。うずうずしてきた私は、東京都の建設事務所に問い合わせをして、調査のために土を少し採取する許可をとりました。早速、アジサイの下の土のpHを比較してみましょう。

土のpHを測定するものに、直接土に差しこんで使う土壌酸度計というのがあるのですが、バイオ科にはないので使えません。そこで、土を水に懸濁し上澄み液のpHを測定することにしました。土壌のpHを測定をするのは初めてです。インターネットでやり方を検索しながら実験してみました。まず土を乾燥させるとあったので、60℃の乾燥機で30分ほど乾かし、20ｇを計測してビーカーに入れました。

土を入れたビーカーに蒸留水を100ｍＬ加え、ガラス棒でかき混ぜました。一晩（15時間）放置したのち、ガラス電極のpHメーターで透明な上澄み液を測定することにしました。校正を終え、電極を上澄み液へ入れると．．．

だいたい土はpH 6.5くらいじゃないかと考えていたので、どちらの土も弱アルカリ性でびっくり。しかも、予想では青アジサイの土の方が赤アジサイの土よりpHが低いと思っていたのに、逆に高い結果になりました。実際に実験をしてみないとわからないものですね。pHメーターは値が安定せず、上がったり下がったりしたため、他の方法でもpHを測定することにしました。土壌のpH測定をあなどるなかれ。思ったよりなかなか難しいです。

次はpH試験紙で測定しました。中学の理科でリトマス紙を使って溶液が酸性かアルカリ性を調べた記憶がある方もいるでしょう。青のリトマス紙が赤くなったら酸性、赤のリトマス紙が青くなったらアルカリ性でした。TTCバイオ科ではもう少し細かくpHを測定することができるpH試験紙があります。

pH試験紙はpHの数値によって色が変わるので、変わった色と色見本とを見比べてpHを測定します。ユニバーサルpH紙はpH1～11までおおよそのpHを調べるのに便利です。他に8 setのpH試験紙があります。色が変化するpHの範囲がそれぞれ異なる8種類の試験紙（CR、TB、BPB、BCG、MR、BTB、AZY、ALB）が入っていて、組み合せにより、pH 0.4～pH 13.6までの範囲で測定できます。

上澄み液をユニバーサルpH紙につけると、色の変化からpHが6～8にしぼれたので、８setの試験紙をいくつか組み合わせてさらにpHを絞りました。BPB（ブロモフェノールブルー）試験紙（pH 5.8～7.8）を使うと、青アジサイの土はpH 6.6に近く、赤紫のアジサイの土はpH 6.2の色見本に近くなりました。

pH試験紙を使った実験ではどちらの土も一般的な弱酸性土壌であるpH 6.0～6.8の範囲でした。しかし、pHメーター同様、青アジサイの土が赤アジサイの土よりpH高めの結果に。教科書と違うなぁ。なぞは深まるばかり。

結論として言えるのは、実際に土壌のpHを測定することは簡単ではなかったということです。今の時代、インターネットで「アジサイの花の色」「土壌のpH」と検索すればあふれるほどたくさんの情報が手に入ります。しかし、それを実験で調べて説明するのはなかなか難しいことです。

知識を習得するだけでなく、実際に確かめてみようとする気持ち。このワクワクは、たとえ実験が失敗しても楽しいものです。「好奇心」こそが学びの原動力。TTCの学生には、実験を楽しむことを忘れないでほしいと思っています。

今回は、土壌のpHを正確に測定できたかわからなかったので、今夏、もう一度、実験系から見直し、山手通りのアジサイの花の色の秘密にせまりたいと思っています！

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文責：宮ノ下いずる