1本3300円のバラ! (バイオ科 卒業研究 2年 DNA班)〔023〕
こんにちは。バイオ科の宮ノ下です。
今、バイオ科の2年生はかなり焦っています。なぜなら、卒業研究の実験や論文の執筆、プレゼンテーションの準備に日々追われているからです。
バイオ科は、2年生になると11月頃から卒業研究を始めます。1~3人のグループごとにテーマを決め、計画を立てて、実験をします。11月は失敗続きでしたが、12月中旬頃からようやく軌道にのり、本気モードに。年明けからはエンジン全開で実験をしたり、結果をまとめています。
本日は、2年生の卒業研究の中からDNA班の実験内容をご紹介します。
「先生、このバラいくらだと思いますか?」と一輪のバラを差し出す学生。
〈バラが似合う男子学生〉
こっこれは!サントリーが遺伝子組換え技術で開発した青いバラではありませんか。お値段なんと1本3300円!青いバラにはパンジー由来の青い色素をつくる遺伝子が組み込まれています。DNA班は、この国産の青いバラやペットフード、お菓子からDNAを抽出し、外来遺伝子を検出する実験をしています。
青いバラは花弁、葉、茎に分けて、それぞれからDNAを抽出します。まずは、花弁を一枚一枚丁寧にはぎ取っていきました。3300円のバラがあっという間にバラバラに….最後の数枚をはぎ取ると、学生は驚いて言いました。「先生、花の中にまた花がありました!」振り向くと、茎の先端には、もさもさした黄色とオレンジ色の塊がついています。学生が花に見えたものはバラの雄しべと雌しべでした。
〈バラの花弁、葉、茎〉
〈バラの雄しべと雌しべ〉
青バラの他に、アメリカのお菓子やペットフードからDNAを抽出します。アメリカ産のトウモロコシは、ほとんどが遺伝子組換え(GM)で作られています。そのため、アメリカで市販されているトウモロコシを原料とするスナック菓子やペットフードにもGMトウモロコシが使われている可能性があります。
〈ウサギやハムスターのエサ〉
〈アメリカのトウモロコシ菓子、ハワイのGMパパイヤ〉
〈スナック菓子を乳棒ですりつぶす様子〉
サンプルをすりつぶす時に苦労したところはありますか?
「硬いトウモロコシをつぶすのが大変でした。乳棒ではつぶせないので、ミキサータイプの粉砕器を使って細かく砕きました。」と学生。
〈ミキサーでトウモロコシを破砕する様子〉
試行錯誤しながら、硬いサンプルからのDNA抽出を行っているようです。
現在は、抽出したDNAに植物由来の遺伝子や外来遺伝子が含まれているかどうか、PCR※で解析中です。
〈DNA班の卒業研究を指導する大藤道衛先生〉
〈DNA班の卒業研究のノート〉
今回は、DNA班の研究内容を紹介しました。
今後は、食品班、植物班、装置開発班の卒業研究を随時紹介していきます。
来週もどうぞお楽しみに★
◆本日のバイテク用語№16◆
PCR:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でもお馴染みのPCR検査。PCRはポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)の略で、目的のDNA(デオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic acid))を増やすために用いる方法です。新型コロナウイルスはRNAウイルスなので、被験者の鼻咽頭ぬぐり液や唾液からRNAを抽出し、RNAからDNAを合成してからPCRを行っています。PCRでウイルス由来のDNAが増幅されると、検査陽性と判断されます。
文責:宮ノ下いずる