突然ですが、壁のシミや写真に写る影が人の顔に見えてきた、そんな経験はありませんか?
私たちは、3つの点や図形が集まった形を見ると、人の顔に見えてしまうという脳の働きがあります。これは錯視の一種で、シミュラクラ現象というらしいです。
〈コンセントの穴〉
〈ボルトで開けた穴〉
これとちょっと似ているのですが、私たちバイオ科教員があるものを見ていると、バイオ分野の〇〇に見えてしまうという不思議な現象があります(笑)今日は、バイオ脳がもたらす一風変わったモノの見え方をいくつかご紹介します♪
バイオ科 錯視 その1)
ペーズリー柄が…
ペーズリー柄が、
ミドリムシに見えてしまう現象
〈ミドリムシ(ユーグレナ) 倍率100倍〉
ミドリムシは、鞭毛(べんもう)をもち元気に動き回る原生動物です。紡錘形(ぼうすいけい)をした0.1㎜ほどの小さな生物で、池や水田など淡水に生息してます。体が緑色をしているのは、葉緑体をもっているから。植物と同じように光合成をおこなっています。このミドリムシの運動性をもつ紡錘状のフォルムが、ペーズリー柄にそっくりなんです。バイオ科では、ミドリムシをクリーンルームにある梅酒瓶の中で飼育しています。
〈梅酒瓶で培養中のミドリムシ〉
バイオ科錯視 その2) 二股に分かれたアルコールランプ(パイトーチ)の炎が… 二股に分かれたパイトーチの炎が、寄生虫の一種「フタゴムシ」に見えてしまう現象 〈フタゴムシのイラスト by宮ノ下〉
イラストは1匹の蝶のように見えますが、2匹のフタゴムシが合体している姿を表したものです。フタゴムシは、コイやフナにつく寄生虫ですが、幼虫のときに出会った相手とイラストのようにくっついて生涯を送るという、なんともロマンチックな特性をもっています。パイトーチの二股に分かれた炎を見て、ウサギの耳を思い浮かべる人はいるかもしれませんが、ロマンチストのバイオ科教員が見ると、合体したフタゴムシを連想しちゃうのです。
バイオ科錯視 その3)
アセロラドリンクが…
アセロラドリンクが、動物細胞培養用の培地に見える現象 〈動物細胞培養培地〉
アセロラドリンクは薄い赤色をしていますが、動物細胞培養に適した培地も同じような色をしています。培地にはフェノールレッドという色素が入っていますが、この色素は溶液のpH(ピーエッチ)の違いで色を変える性質があります。一般的に、哺乳動物細胞はpH7.4に調整した培地で培養しますが、フェノールレッドはpH7.4で赤になるので、培地も赤色になります。バイオ科では、実習で動物細胞培養を頻繁に行うので、アセロラドリンクを見るたび、培地を思い浮かべてしまうのです。 〈pHが異なる培地の色〉
バイオ科錯視 その4) みかんのつぶつぶが…. みかんのつぶつぶが、培養している接着細胞にみえる現象 〈シャーレで培養したHeLa細胞〉 再び、細胞培養の話です。皮膚の細胞のように、シート状に広がって増殖していく細胞を接着細胞といいます。バイオ科では、動物細胞培養実習で接着細胞の1つ、ヒトの子宮頚部上皮がん細胞のHeLa細胞をよく使います。HeLa細胞をシャーレやフラスコで培養すると、細胞が容器の底に貼り付いて分裂増殖を繰り返していきます。増殖すると、写真のように1つ1つの細胞が、紡錘形になり敷石を敷いたように広がります。この増殖した細胞が、みかんのつぶつぶ構造とよく似ていると思いませんか? バイオ科錯視 その5 夜空に輝く星々が…. 夜空に輝く星々が、細菌(バクテリア)のコロニーに見える現象。 〈GFP遺伝子を組み込んだ大腸菌のコロニー(右写真)〉 〈カラフルな栄養培地で培養した細菌のコロニー〉
細菌は髪の毛(0.1㎜)の100分の1ほどの大きさ(1μmほど)の微生物です。あまりに小さいので、顕微鏡を使わないと1つ1つの細菌を観察できません。ところが、細菌を培地で培養すると、分裂を繰り返して増殖し、翌日には肉眼で見えるほどの菌の集合体(なんと1菌体から100万以上の菌の塊)になります。この集合体を菌の集落(コロニー)といいます。コロニーが培地いっぱいに生えると、まるで夜空で輝く星々のように見えます。バイオ科教員は、培地の中に壮大な宇宙を感じているのです。 ここまで、バイオ脳で見たときのモノの見え方をご紹介してきました。「バイオ科の人たちって変人ばっかり!」という声が聞こえてきそうです(^_^;)「いや、言われてみると、ペーズリー柄がミドリムシに見えてきた!」という人も案外いるかもしれませんね。もし、そう見えてきたなら、あなたも私たちと一緒でバイオロジストの仲間です! 来週のバイオ科ブログもどうぞお楽しみに★ バイオ科 Twitter 毎日更新中♪こちらも宜しくお願いしま~す(*^ ^*)東京テクニカルカレッジ バイオテクノロジー科 (@TTCbio)
文責:宮ノ下いずる